マテリアリティ

組織にとっての重要課題を示す言葉

マテリアリティとは、組織にとっての重要課題を示す言葉である。その語源は財務報告の中で情報の欠落や誤情報が、投資家の経済的意思決定に重大な影響を及ぼさないよう、「マテリアル」として位置づけられたことにはじまる。その後、時代の流れとともに企業利益を追求する財務指標だけでなく、より社会や環境への影響も配慮すべきだと考えられ、こうした意識変化から以前よりも幅広い意味の指標になった。

ビジネスと財務の分野では、マテリアリティは、投資家や決策者が会社の財務状況や業績を理解するために重要な情報を意味する。たとえば、ある情報がマテリアル(重要)であるとは、その情報が開示された場合に、投資家の投資決定に影響を及ぼす可能性があることを意味する。

持続可能性報告や環境、社会、ガバナンス(ESG)の文脈では、マテリアリティは、組織が社会や環境に及ぼす影響、またはその逆を指す。この観点からマテリアリティを考えると、企業は自身のビジネスモデルと戦略が地球や社会にどのように影響を及ぼすか、またはこれらの要素からどのように影響を受けるかを理解し、評価する必要がある。

監査においては、マテリアリティは監査人が意思決定を行う上で重要な情報であり、その存在または欠如が監査結果に重大な影響を及ぼす可能性がある情報を指す。

マテリアリティを設定する際の代表的な基準には次の3つが挙げられる。

1:GRIガイドライン

国際的な非営利団体GRIが策定したサステナビリティに関するガイドライン。企業が自社の事業活動が社会問題に与える影響に対して責任を持ち、社会貢献活動を促進させることを目的としている。「GRIスタンダード」と呼ばれる基準でサステナビリティレポートに用いられる

2:IIRCのマテリアリティ

IIRCとは、2010年にGRIが母体となって設立された非営利団体 International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の略称。企業業績などの財務情報に、企業が環境保全などの社会貢献活動にどの程度取り組んでいるか等といった非財務情報などをまとめたフレームワーク「統合報告(Integrated reporting)」を開発している

3:SASBのマテリアリティ

SASBとは、Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)の略称。ESG情報開示の効率化を進める

近年、企業サイトなどでマテリアリティを公開し、目にする機会が増えた背景には、投資家とのコミュニケーションだけでなく、コンプライアンスの文脈でも必要とされているからだ。企業はマテリアリティを公開し、そのプロセスを通じて企業の価値、リスク、および機会を明らかにし、さまざまなステークホルダーとの関係を強化するためにマテリアリティを公開している。

実際に国内の企業事例を見てみると、電子部品やヘルスケア機器の製造・販売をおこなう株式会社オムロンでは、「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」を企業の存在意義とし、下記5つのマテリアリティを設定し、公開している。

  • 1:事業を通じた社会的課題の解決
  • 2:ソーシャルニーズ創造力の最大化
  • 3:価値創造にチャレンジする多様な人財づくり
  • 4:脱炭素・環境負荷低減の実現
  • 5:バリューチェーンにおける人権の尊重のマテリアリティ

また、KDDIは、「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献する」という企業理念を掲げ、情報技術を用いて社会を豊かにすることを目標に下記6つのマテリアリティを設定している。

  • 1:安全で強靭な情報通信社会の構築
  • 2:情報セキュリティの確保とプライバシーの保護
  • 3:ICTを通じた心豊かな暮らしの実現
  • 4:多様な人財の育成と働きがいのある労働環境の実現
  • 5:人権尊重と公正な事業活動の推進
  • 6:エネルギー効率の向上と資源循環の達成

以上のように、マテリアリティは企業としてのさらなる成長を目指し、企業として向かうべき先がどの目標に対応しているのか、どのような社会課題が考えられるのかを明確にするのに役立つ。マテリアリティは、企業が持続可能性を追求し、リスクを管理し、投資家やその他のステークホルダーに対する情報開示を改善するための重要な概念となっている。

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