ポストコンサルのキャリア論~コンサルタント経験者のキャリアパスを徹底解説

経営幹部採用のキーワードは「ポストコンサル」

いま、積極的に経営幹部の採用を行うスタートアップ企業、大手事業会社、PEファンドの多くが「コンサル出身者(ポストコンサル)を採用したい」と口を揃えます。
よく知られているように、コンサルティングファームの出身者の年収は総じて高く、事業会社の年収水準とは大きくかけ離れています。ポストコンサルを採用したいなら、通常よりも高い条件を出さないと難しい場合が多いでしょう。それにも関わらず、なぜポストコンサルを幹部採用したい企業が増えているのでしょうか。
ポストコンサルは具体的にどのようなスキルが評価され、どのようなキャリア展開が可能なのか、本記事では、ポストコンサルのキャリアパスについて徹底解説をしたいと思います。

1. ポストコンサルが評価される理由

「ポストコンサル」とはコンサルティングファームやシンクタンクのコンサルティング部門で従事した経験を持つコンサル出身者のことです。上述のように現代の転職市場においてコンサルティング業界での経験は、経営幹部に至る「キャリアの高速道路」とも言えるほど高い評価を受けています。
これは、マッキンゼーやBCGなどの一部の外資戦略系ファームに限定された話ではありません。外資・日系の総合系ファーム、FAS、シンクタンク、組織人事系コンサル、IT系コンサルなど、様々なコンサルティングファームの出身者が転職市場において引く手あまたとなっています。

このようにポストコンサルが高い評価を受ける理由は主に3つあり「汎用性の高い問題解決能力」、「高度なリーダーシップ」、「高いプロフェッショナルマインド」が挙げられます。以下、それぞれについて詳細にみていきましょう。

ポストコンサルが評価される理由1:汎用性の高い問題解決力

一般的な大手企業では、経営課題に20代~30代で向き合い、解決するまでの経験を積めることは稀でしょう。仮に経験できたとしても、自分が所属する企業の改革のみですので、他企業の改革にすぐに役立つ汎用的なスキルを培うのは困難です。
一方、コンサルタントは様々な企業を対象に経営者視点で専門領域の問題解決を行うことで、固有の業界や企業に縛られない、汎用的な問題解決能力を培うことができます。また、日常的に経営課題の解決を繰り返し行っているため、若くとも豊富な改革経験を持っています。これこそが、ポストコンサルが若くして事業会社の役員や事業責任者といったハイポジションに抜擢される理由のひとつとなっています。

ポストコンサルが評価される理由2:高度なリーダーシップ

現代のコンサルティングファームは問題解決のための提案だけでなく実行支援まで踏み込み、クライアントへの具体的な成果をもたらすことを重視しています。
そのため、プロジェクトの成功にはクライアント企業の組織や人、場合によってはクライアント以外のステークホルダーも巻き込んで動かすということが重要になります。しかも、会社内の上下関係や大企業の看板を使って、組織を動かしている訳ではありませんので、コンサルタントは高度なリーダーシップをもとめられます。
ロジック面の説得力だけでなく、感情にも配慮した高度なリーダーシップスキルを若いうちから磨いていること、これがポストコンサルの評価が高い2つ目の理由といえます。

ポストコンサルが評価される理由3:高いプロフェッショナルマインド

コンサルタントは資格不要とはいえ医師や弁護士、会計士などと同様の専門職、プロフェッショナルです。自らの思考や提案のみが商品であり、困難な状況においても高額な報酬に見合うだけの価値をクライアントに提供する「プロフェッショナルマインド」が必須となります。
ギリシャの彫刻家フエイディアスが、「なぜ誰にも見えない背中まで彫刻を彫るのか」と問われた際に、「神々が見ている」と答えたという逸話があります。専門性の高いプロフェッショナルの仕事は、時にはクライアントが気づいていないこと、要望の枠を超えた点にも、踏み込んで考える必要があります。そこまで考え抜かなくても、プロジェクト終了時にクライアントは満足してくれるかもしれません。しかしそれでは、中長期的にはクライアントの成功につながらない恐れがあります。クライアントを満足させるだけではなく、その先を見据えて全力を尽くすという“良心”に従うことが大切な仕事なのです。
さらに、企業や社会の抱える課題は刻一刻と変化しているため、日常業務の隙間時間や休日を活用して、最先端の知識やスキルを学び続ける“探究心”も必要です。残業代が出ないなら仕事に関することはしない、といった発想とは全く異なります。活躍しているコンサルタントは、良い意味で公私混同をしていると言えるでしょう。
鍛え上げた高度なスキルを用いて、顧客や社会のために最後まで粘り強く全力を尽くす姿勢が身についていること、これこそがポストコンサルが経営者から信頼され、評価される3つ目のポイントです。

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2. ポストコンサルのキャリアパスの特徴

ポストコンサルのキャリアパスにはどのような選択肢があるのでしょうか。様々なネクストキャリアがあることは先に述べた通りですが、経験領域や年齢、職階によって一定の傾向が見られます。

経験領域によるネクストキャリアの違い

▼ポストコンサルのキャリアパス

経験領域 事業会社での代表的なネクストキャリア
戦略コンサル経験者
戦略系・総合系・大手シンクタンクなど
CEO・COO・事業責任者などのCxOや経営幹部
事業会社の経営企画部門、
経営陣直下の特命チーム、幹部育成コース
専門領域コンサル経験者
IT系・組織人事系・財務系(FAS)
それぞれの専門領域に該当する部門
(IT企画部門、組織人事部門、財務部門)
CIO・CHO・CFO等の経営幹部候補

参考:『新版 コンサル業界大研究』(産学社)
コンコードエグゼクティブグループ/コンサルティングファーム研究会著
「ポストコンサルのキャリア論」より作成

戦略系・総合系・大手シンクタンクなどの戦略コンサル経験者の場合、特定領域における専門知識はやや薄くなる傾向があるため、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、事業責任者などのゼネラルなカラーの経営幹部を目指すケースが多くなります。

一方、IT系、組織人事系、財務系(FAS)といった専門領域を持つコンサル経験者の場合は、それぞれの専門領域に該当する部門へ転職した後、CIO(最高情報責任者)やCHO(最高人事責任者)、CFO(最高財務責任者)などの経営幹部を目指すキャリアを形成する傾向があります。

年齢や職階によるネクストキャリアの違い

ポストコンサルのネクストキャリアは、転職時の年齢や職階によっても傾向が分かれます。

年齢(職域) キャリアパスの傾向
20代:若手コンサルタント
(アナリスト~コンサルタント)
・他のコンサルティングファーム
・PEファンド
・ベンチャー企業の経営幹部候補
30代:中堅コンサルタント
(シニアコンサルタント~
マネージャークラス)
・他のコンサルティングファーム
・ベンチャー企業の経営幹部
・外資系企業や日系企業のマネジメントポジション
・起業
40代~50代:エグゼクティブ
(ディレクター~パートナークラス)
・事業会社の社長、役員
・他ファームのエグゼクティブポジション
・現職に残りながらスタートアップへの支援や大学での教育活動など

参考:『新版 コンサル業界大研究』(産学社)
コンコードエグゼクティブグループ/コンサルティングファーム研究会著
「ポストコンサルのキャリア論」より作成

20代の若手コンサルタント(アナリスト、コンサルタントクラス)は、他のコンサルティングファームへの転職や、PEファンド、ベンチャー企業の経営幹部候補への転職を選ぶ傾向が強くなっています。もちろん、日系の大手企業への転職を検討する方もいらっしゃいます。しかし、若いうちから経営者視点の仕事を任せられるチャンスは少なく、報酬面でも魅力が下がるために、候補には上がるものの選択しないことが多いのです。

30代の中堅コンサルタント(シニアコンサルタント、マネジャークラス)になると、20代のころよりも選択肢が広がります。他のコンサルティングファームやベンチャー企業からも引く手数多なうえ、外資系企業や日系企業のマネジメントポジションに転身する人や、自身で起業する人もいます。転身先の幅が最も広い年齢層と言えるでしょう。

40代~50代以上のエグゼクティブ層になってくると、事業会社の社長、役員レベルのポジションを検討することが多くなります。しかし、社会へ与える影響の大きさや働き方の自由度、報酬の高さなどを、事業会社とコンサルティングファームとで比較した結果、ファームのエグゼクティブポジションの価値に改めて気がつくケースも少なくありません。そのため、他ファームのエグゼクティブへ転職したり、現職に残りながらスタートアップの支援や大学での教育活動をしたりする方が多い傾向があります。

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3. 主要なネクストキャリアとしての6つの選択肢

様々な選択肢が広がるポストコンサルのネクストキャリアの中で、主要なものをご紹介します。

外資系企業
~給与水準の高さとワークライフバランスの良さ、専門領域でのキャリア形成

外資系企業は、ポストコンサルの転職先として、代表的なキャリアパスの一つです。具体的には、ファイザー、グラクソスミスクラインなどの製薬会社、Apple、Amazon、GoogleなどのIT企業、P&G、VISA、AIG、LVMH、ケリングなどのグローバルカンパニーが挙げられます。
高齢化を背景として安定的な経営が行われている医療・ヘルスケア業界の外資系企業への転職は人気転職先の一つです。また、事業の社会的なインパクトの大きさや、今後の事業成長を鑑みて、グローバルIT企業への転職を目指す人も増えています。

外資系企業への転職の魅力のひとつは、給与水準の高さと勤務時間の長さのバランスの良さにあります。業界や企業によっても差が大きいため、まとめて記述することはやや難しいのですが、30代で外資系企業の日本オフィスのマネージャーやディレクターレベルに就けば、1000万円台半ば~2000万円程度という高い年収となるケースが多いでしょう。一方で、コンサルティングファームほどの長時間勤務にはならないため、ワークライフバランスを考えるポストコンサルから人気の高いキャリアパスとなっています。
さらに、日系企業の総合職のように様々な職種をローテーションすることもないため、希望する職種で専門性を高められる点も魅力の一つです。
もう一つ特筆すべき点として、外資系企業はコンサルティングファームへ継続的にプロジェクトを発注している企業が多いことから、ポストコンサルを高いポジションで受け入れる土壌があり、社内の幅広い部門でポストコンサルが活躍している点も魅力的です。

ベンチャー企業(幹部ポジション)
~社会課題を解決するやりがいある仕事、優秀な起業家のもとでの成長機会

現在、ポストコンサルが最も注目しており、人気が急上昇しているのが、ベンチャー企業の幹部ポジションへの転職です。
昨今では良好な資金調達環境から、ベンチャー企業の用意できる報酬水準が飛躍的に上昇し、ポストコンサルにとって魅力的な転職先となりました。

ベンチャー企業の多くは、社会課題をテクノロジーやプラットフォームの力で解決するような社会的インパクトのある事業展開を志向しています。そのような社会的意義のある仕事で自身の力を発揮したいと考えるポストコンサルを惹きつけています。
また、優秀な起業家のもとでビジネス経験を積めることは、将来起業したいと考える人にとって、貴重な成長機会となります。このような観点からもネクストキャリアとしての人気が上昇しています。

大手日系企業
~日本を代表する大企業の意思決定に参画し、事業を舵取りできる

これまでは年功的な人事制度や、新卒一括採用中心のカルチャーがネックになり、ポストコンサルからの人気が芳しくなかった大手日系企業でしたが、昨今は徐々に注目を集めるようになってきています。
現在、多くの大手日系企業は競争環境の激化に伴い、M&AやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、DX推進など、今まで以上にダイナミックに改革していく必要に迫られています。そのため、企業の生き残りをかけた改革の担い手として、外部からポストコンサルを魅力的なポジションで登用するようになってきました。

日本を代表する大企業だからこそ実現できる、社会的インパクトの大きな事業に関わることができる点は大きな魅力です。例えば、総合商社で環境ビジネスや資源開発、交通インフラ事業に携わる、大手ディベロッパーでまちづくりに関わるといったような仕事は日系大手企業ならではの醍醐味と言えるでしょう。
ただし、まだポストコンサルの採用や活用に慣れていない企業が多いため、転職先を選定する際には注意が必要です。管理職における中途入社の割合や入社後の年収の上り幅なども確認しておくと良いでしょう。

PEファンド
~プロフェッショナルファームに所属し、高収入を得ながら、当事者として企業経営に参画できる希少なキャリア

「クライアントに提案したプランの実行に、最後まで責任を持って伴走したい」という望みを持つコンサルタントは少なくありません。
そのため、企業に投資している株主の立場から経営に参画し、長いスパンで抜本的改革を推進できるPEファンドへの転職は、ポストコンサルから人気が高くなっています。

PEファンドへの転職の魅力は、事業会社の経営に参画しながら、プロフェッショナルファームとしての高い収入も得られる点にあります。しかも、担当企業が成功すれば、インセンティブボーナスでさらに大きな収入を得られる魅力もあり、収入にレバレッジを効かせることが可能です。また、ワークライフバランスの観点も見逃せません。投資するまでの意思決定や、投資後の事業立て直し期間は忙しいものの、事業が軌道に乗れば、モニタリング業務が中心となるため、日々の業務はコンサルティングファームに比べて忙しくない点も魅力のひとつと言えるでしょう。

コンサルtoコンサル
~自身の志向や希望を満たすファームへの転職で仕事の満足度向上

現在所属しているコンサルティングファームから、他のコンサルティングファームへと転職する「コンサルtoコンサル転職」を選択する人も多数います。なぜ、わざわざ同業界内で転職するのだろうかと疑問を感じるかも知れませんが、実はそこには様々なメリットがあるのです。

コンサルティング経験をフルに活かしつつ、自身の志向や希望が叶う転職を実現できるのがコンサルtoコンサル転職の魅力です。近年、コンサルティング業界が急拡大する中で、即戦力となるコンサル経験者へ従来以上の好条件が提示されており、その魅力が増しています。

コンサルtoコンサル転職は、「領域シフト型」「ポジション向上型」「ワークライフバランス型」「営業リソース獲得型」の4つに大別されます。

  • 領域シフト型:戦略系などのゼネラル領域を扱うファームから、財務や組織人事系など専門領域を扱うファームへの転身や、その逆となる専門領域型からゼネラル型への転職を目指す場合などがあります。領域シフト型の転職は、若手~中堅のポストコンサルが多くなります。
  • ポジション向上型:各ファームが組織を拡大している昨今、即戦力となるコンサル経験者を高いポジションで抜擢するようになってきています。そのため、同領域のファームに転身し、より高いポジションと収入を目指す方も増えてきています。
  • ワークライフバランス型:業務内容や年収を維持しつつ、より働きやすいファームを目指す場合もあります。昨今は、コンサルタントのリテンションのためにワークライフバランスに配慮しているファームも珍しくありません。育児や介護などをしながら働きたい場合には、職場を変えるという選択肢もあるのです。
  • 営業リソース獲得型:営業活動にかかる負担を軽くし、プロジェクトに専念したいと考えるエグゼクティブ層のポストコンサルは、案件受注力を持つファームへの転職をすることで、コンサルとして活躍しやすくなります。

起業
~より良い社会に向けて、大きなやりがいと経営の意識決定権が魅力

起業はポストコンサルにとって、すでに身近なキャリアの一つとなっています。ポストコンサルが起業したベンチャー企業の成功事例も多く、エムスリーやオイシックス、ラクスルなどがよく知られています。

起業には、コンサルタントとして培った経営に関する見識や、問題解決能力を活用しつつ、社会的にインパクトのある事業を推進できる魅力があります。
「より良い社会をつくりたい」という想いをもつ人にとって、大きなやりがいとなることは言うまでもありません。さらに、自分自身で経営の意思決定を行うことができ、事業がうまくいけば非常に高い報酬を得ることができる点も魅力的です。
ただし、一般的にコンサル時代に培ったスキルと起業家に求められるスキルにはややギャップがある点には注意が必要です。例えば、実際に事業を推進していく際には、起業する領域における業務知識やネットワークが重要になります。しかし、業務知識やネットワークを軽んじていたポストコンサルが、起業後にトラブルに巻き込まれて苦労するケースは珍しくありません。そのため、コンサルティングファームを卒業した後ですぐに起業するのではなく、関心のある分野の企業で経験を積んだり、ベンチャー企業へ転職して小資本のビジネスを運営する経験を積んでみたりすることも有力なキャリア設計となるでしょう。

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4. 自分の軸となる「キャリアビジョン」を持つ

これまで見てきたように、ポストコンサルには、幅広い業界の経営幹部・幹部候補、あるいはプロフェッショナルとしての魅力なキャリアが広がっています。
しかし、選択肢の幅が広いからこそ注意が必要です。コンサルティングファームに勤めていると、さまざまなヘッドハンターからのスカウトを受けるようになります。提案される待遇の魅力や、企業の知名度に惑わされると、自分の望む人生から離れてしまうことにもなりかねません。
そこでまずは、自分が何を成し遂げたいのかという軸となる「キャリアビジョン」を持つことをおすすめしたいと思います。そのうえで、キャリアビジョンの実現に向けて、どのようなキャリアを積み重ねていくべきかという「キャリア戦略」を考えてから、業界や企業を選択していただくと良いでしょう。
キャリアビジョンやキャリア戦略は、一朝一夕に固まるものではありません。スカウトを受けてから慌てて考えるのではなく、日記やキャリア・コーチングなどを通じて、日常的にご自身の価値観や問題意識と向き合い、時間をかけて掴んでおいていただくとよいかと思います。

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