GQP・GVP

GQP(Good Quality Practice:製造販売品質管理基準)およびGVP(Good Vigilance Practice:製造販売後安全管理基準)とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の製造販売業を営む事業者が、製造販売業の許可要件として遵守しなければならない厚生労働省令の通称である。

医薬品や化粧品の市場に新たに参入しようとする企業は、どのような法令上の品質・安全管理義務を負うのか。

この問いの答えとなる中核的な省令がGQPとGVPである。

両省令は、製造販売業の許可を取得・維持するための法定要件として機能しており、製品を市場へ出荷する前段階の品質管理(GQP)と、出荷後に消費者・患者が使用する段階での安全管理(GVP)という、製品ライフサイクル全体をカバーする体制整備を事業者に求める。

医薬品・化粧品産業を対象とするコンサルティングにおいては、クライアント企業の法令適合状況を診断し、業務プロセスや組織体制の再設計を支援する場面でこれらの省令の理解が前提となる。

GQP・GVPとは

GQPはGood Quality Practiceの略称であり、日本語では「製造販売品質管理の基準」と呼ばれる。

正式な省令名は「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第136号)であり、医薬品医療機器等法(薬機法:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第12条の2第1号(医薬品・医薬部外品・化粧品の製造販売業許可要件)および第23条の21第1号(再生医療等製品の製造販売業許可要件)を根拠とする。

製造販売業者が市場への出荷判定から製造業者の監督・管理に至るまでの品質管理業務を適正に実施するための基準を定めたものである。

GVPはGood Vigilance Practiceの略称であり、日本語では「製造販売後安全管理の基準」と呼ばれる。

正式な省令名は「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第135号)であり、薬機法第12条の2第1項第2号を根拠とする。

製品が市場に流通した後、消費者・医療関係者から寄せられる安全管理情報(品質・有効性・安全性に関する事項その他適正な使用のために必要な情報)を収集・評価し、必要な安全確保措置を実施するまでの一連の業務基準を定めたものである。

なお、医薬品における「副作用情報」は安全管理情報の代表例であるが、化粧品・医療機器等においては品質・有効性・安全性に関する情報全般が対象となる。

両省令は、GQPが「出荷前の品質確保」を、GVPが「出荷後の安全確保」をそれぞれ担う形で補完関係にある。

製造販売業の許可区分(第一種・第二種・第三種)によって適用される条項の範囲が異なり、処方箋医薬品や高度管理医療機器を扱う第一種製造販売業者には最も厳格な要件が課される。

なお、GQP・GVPはあくまで製造販売業者(市場への供給責任を持つ者)に対する基準であり、製造行為そのものを規律するGMP省令(Good Manufacturing Practice:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)とは適用対象が異なる点に注意が必要である。

GQP・GVPの業務構造図

区分 省令名(通称) 主な対象フェーズ 主管責任者 主な業務内容
GQP 製造販売品質管理基準(厚生労働省令第136号) 出荷前(製造〜市場流通前) 品質保証責任者(QA責任者) 市場出荷判定・製造業者監督・品質情報処理・回収対応・手順書整備
GVP 製造販売後安全管理基準(厚生労働省令第135号) 出荷後(市場流通〜使用段階) 安全管理責任者 安全管理情報の収集・検討・安全確保措置の立案・実施・記録保存

GQP・GVPの具体例/ミニケース

化粧品製造販売業者のケース

国内の中堅化粧品メーカーA社が新ブランドを立ち上げ、製造販売業許可を新規取得する場面を想定する。

GQP対応として、A社はまず「品質管理業務手順書(GQP手順書)」を整備する。具体的には、OEM製造委託先(製造業者等)との品質取決め書を締結し、製造所での製造管理・品質管理状況を定期的に確認する体制を構築する。

市場への出荷の可否は、品質保証責任者(QA責任者)が製造記録・試験成績書を確認した上で判定する。

消費者からの品質苦情が寄せられた場合は、品質情報として受付・評価し、必要に応じて製造業者への改善指示や自主回収の判断を行う。

GVP対応として、A社は「製造販売後安全管理業務手順書(GVP手順書)」を整備し、安全管理責任者を配置する。

使用後の副作用情報や消費者の健康被害に関する情報を継続的に収集・評価し、重篤な事例は薬機法に基づき厚生労働大臣への報告(副作用報告)を行う。

情報収集にはMR(医薬情報担当者)の活動結果、行政機関からの通知、学術文献等も含まれる。

医薬品製造販売業者(第一種)のケース

大手製薬メーカーB社が処方箋医薬品を新たに製造販売する場面では、第一種製造販売業者として最も厳格な基準が適用される。

GVP上は安全管理統括部門の設置が義務付けられ、安全管理責任者の独立性(販売部門からの組織的分離)が要求される。

また、RMP(医薬品リスク管理計画:Risk Management Plan)に基づく製造販売後調査等管理責任者との連携手順を手順書に明記する必要がある。

GQP・GVPと類似省令との違い

省令・基準 適用対象者 規律するフェーズ 主な管理対象
GQP省令 製造販売業者 製造〜市場出荷前 品質管理業務・出荷判定・製造業者監督
GVP省令 製造販売業者 市場流通後〜使用段階 安全管理情報収集・副作用報告・安全確保措置
GMP省令 製造業者(製造所) 製造工程(製造行為そのもの) 製造管理・品質管理・製造記録
GPSP省令 製造販売業者(医薬品・医療機器) 市場流通後(調査・試験) 製造販売後調査(再審査・再評価)・市販後臨床試験
QMS体制省令/QMS省令 医療機器・体外診断用医薬品の製造販売業者(許可要件はQMS体制省令が根拠) 製造管理・品質管理(製造販売業者の管理体制と製造所の品質管理) 医療機器の品質マネジメントシステム(GQP省令は医療機器に不適用)

GMP省令(Good Manufacturing Practice)は製造業者、すなわち製造行為を行う工場・製造所を規律するものであり、製造販売業者を規律するGQP・GVPとは適用主体が異なる。

同一グループ企業が製造業と製造販売業を兼ねる場合でも、法的な許可区分は分離されており、それぞれの省令に個別に適合する必要がある。

医療機器および体外診断用医薬品については、平成26年(2014年)11月25日施行の薬機法改正によってGQP省令の適用対象から除外された。

医療機器製造販売業者の品質管理に係る許可要件は、QMS体制省令(医療機器又は体外診断用医薬品の製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令:平成26年厚生労働省令第94号)が適用される。

製造所における製造管理・品質管理の方法そのものはQMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令:平成16年厚生労働省令第169号)が規律する。

なお、QMS省令は令和3年(2021年)3月に医療機器品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 13485:2016との整合を図るための大規模改正が行われており(令和3年厚生労働省令第60号)、医療機器セクターにおける品質管理基準の国際的な整合性が強化されている。

GVP省令は引き続き医療機器の製造販売業者にも適用される。

GPSP省令(Good Post-marketing Study Practice:製造販売後の調査及び試験の実施の基準)は、GVPと同様に市場出荷後を対象とするが、主に再審査・再評価に向けた製造販売後調査(使用成績調査・特定使用成績調査等)を規律するものであり、日常的な安全管理情報の収集・対応を定めるGVPとは守備範囲が異なる。

コンサルティング業務での位置づけ

論点設計(イシュー出し)

医薬品・化粧品メーカーへのコンサルティングプロジェクトにおいて、GQP・GVPは最初の論点整理段階から登場する。

許可取得支援・許可更新対応・組織再編後の体制整備・M&A後の統合(PMI:Post-Merger Integration)といった文脈で、「現状の業務体制はGQP・GVP省令に適合しているか」という問いが中核的なイシューとなる。

三役(総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者)の配置状況、手順書の整備状況、記録管理の実効性を論点として設定することが多い。

現状分析(As-Is整理)

現状分析フェーズでは、GQP・GVP手順書のレビューおよびギャップ分析(Gap Analysis:法令要件と実態の乖離を可視化する分析手法)が主要なアウトプットとなる。

具体的には、省令の各条項を横軸に、自社の手順書・実績記録・体制図を縦軸に置いた適合性チェックリストを用いて現状を把握する。

製造業者等との品質取決め書の締結状況、安全管理情報の収集頻度・評価プロセス、副作用報告の遅延実績なども定量的に確認する。

施策設計(To-Be)

ギャップ分析の結果を踏まえ、手順書の改訂・新設、責任者の選任・兼任可否の判断、教育訓練計画の策定、情報収集チャネルの整備といった施策を設計する。

特に組織規模の小さなクライアント企業では、三役の兼務可否が論点となりやすい。

省令上、兼務が「望ましくない」とされつつも合理性がある範囲で許容される旨が行政から示されており(京都府健康福祉部薬務課通知等)、実務上は所管の保健所・薬務課との事前確認を経たうえで施策を提案することが重要である。

また、令和元年改正薬機法に基づき令和3年(2021年)8月1日に施行された法令遵守体制の整備義務も、近年の製薬コンサルティングにおける重要な論点となっている。

この改正により、製造販売業者等は「薬事に関する業務に責任を有する役員(責任役員)」を薬機法上に位置付け、その責任を明確化することが義務付けられた(薬機法第18条の2)。

あわせて、総括製造販売責任者をはじめとする現場責任者の意見申述権が法定化され、製造販売業者はその意見を尊重し必要な措置を講じる義務を負う。

過去の製薬業界における品質不正問題を受けた制度強化であり、三役と経営陣のガバナンス連動という観点でGQP・GVP体制整備の施策設計に組み込むべき要素となっている。

資料作成(スライド構造)

コンサルティングの最終報告においては、省令条項とクライアントの業務プロセスを対応付けた「適合性マトリクス」、改訂が必要な手順書の一覧と優先度付け、体制図(三役の配置・指揮命令系統)などをスライドとして整備する。

経営層への報告では、法令違反リスク(許可取消・業務停止)の財務インパクトを定量化して示すことが説得力を高める。

コンサル採用面接で問われる理由

GQP・GVPはコンサルティング採用面接において直接的に知識を問われることは少ない。

しかし、ライフサイエンス・ヘルスケア領域を志望する場合、あるいはケース面接で製薬・化粧品メーカーのオペレーション改善や新規参入戦略を扱う場合に、この種の規制要件をどの程度所与の条件として把握しているかが、解答の深度に影響する。

例えば、「化粧品会社が新製品ラインを立ち上げる際のリスクと準備事項は何か」というケース問題において、市場性・競合分析だけでなく製造販売業許可の要件充足という規制面の論点を自然に組み込める思考は、業界理解の深さを示す材料になる。

GQP・GVPの概要と考え方の骨格を把握しておくことで、ライフサイエンス系プロジェクトにおける論点構成に説得力が生まれる。

FAQ

Q1. GQP・GVPとはどのような省令か?

GQP(Good Quality Practice:製造販売品質管理基準)とGVP(Good Vigilance Practice:製造販売後安全管理基準)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の製造販売業の許可要件として厚生労働省が定めた省令である。

GQPは出荷前の品質管理業務(市場への出荷判定・製造業者の監督・品質不良対応等)の基準を定めたもの(厚生労働省令第136号)であり、GVPは製品が市場に流通した後の安全管理業務(副作用情報の収集・評価・安全確保措置の実施等)の基準を定めたもの(厚生労働省令第135号)である。

いずれも平成16年(2004年)9月22日に公布され、平成17年(2005年)4月1日より施行された。

なお、医療機器および体外診断用医薬品については、平成26年の薬機法改正によりGQP省令の適用対象外とされており、品質管理に係る許可要件はQMS体制省令が適用される(GVP省令は引き続き適用対象)。

製造販売業者は許可の取得・維持のためにこれらの省令に適合した業務体制を構築・運用し続けることが求められる。

Q2. GQPとGVPはどこが違うか?

GQPとGVPの最大の違いは「対象フェーズ」にある。

GQPは市場への出荷前、すなわち製品の製造から出荷判定までの品質管理業務を規律する省令であり、品質保証責任者(QA責任者)が主管する。

具体的には、製造業者等との品質取決め・製造業者の定期確認・出荷判定・品質不良処理・回収対応が主な業務となる。

一方GVPは、製品が市場に流通した後の安全管理業務を規律する省令であり、安全管理責任者が主管する。

安全管理情報(品質・有効性・安全性に関する事項その他適正な使用に必要な情報。医薬品では副作用情報が典型であるが、化粧品・医療機器等では品質・有効性・安全性に関する情報全般が含まれる)の収集・評価・安全確保措置の立案・実施・報告が主な業務となる。

GQPが「製品を安全に市場へ出す」ための基準であるとすれば、GVPは「製品が市場に出た後の安全を確保する」ための基準と理解するとよい。

Q3. GQP・GVP対応の実務上の手順はどのようになるか?

GQP・GVP対応の実務は主に3段階で構成される。

第一段階は「手順書の整備」であり、GQP手順書(品質管理業務手順書)およびGVP手順書(製造販売後安全管理業務手順書)を各社・各製品の実態に即して作成する。

省令に定める必須事項(市場への出荷管理・品質情報処理・回収処理・安全管理情報の収集・検討・措置実施等)を網羅したうえで、自社独自の実施方法・責任分担・記録様式を規定する。

第二段階は「実施と記録」であり、手順書に基づき業務を遂行し、すべての実施内容を記録として残す。

第三段階は「自己点検と改善」であり、定期的な自己点検によって手順書と実態の乖離を確認し、必要に応じて手順書の改訂や体制の見直しを行う。

行政による立入検査(適合性調査)にも対応できるよう、記録の保存管理を徹底することが重要である。

Q4. コンサルティングの現場でGQP・GVPはどのように活用されるか?

コンサルティングの場面では、主に4つのシーンでGQP・GVPの理解が実務価値をもつ。

第一に、製薬・化粧品メーカーへの許可取得支援または許可更新対応において、省令適合状況のギャップ分析と手順書整備の優先度付けを行う場面である。

第二に、M&A後のPMI(Post-Merger Integration:経営統合作業)において、被買収企業の品質・安全管理体制の実態調査と統合計画の策定を行う場面である。

第三に、業務効率化・DX推進プロジェクトにおいて、手順書・記録管理の電子化(電磁的記録の活用)が省令上どの範囲で認められるかを判断する場面である。

第四に、コンプライアンス・リスク管理のフレームワーク構築支援として、省令違反リスク(許可取消・業務停止処分)を財務インパクトに換算してリスクマトリクスに組み込む場面である。

Q5. GQP・GVPに関してよくある誤解は何か?

最も多い誤解は「GQP・GVPはGMPと同じものである」という認識である。

GMP(Good Manufacturing Practice)は製造業者、すなわち物理的に製品を製造する工場・製造所が遵守すべき省令であるのに対し、GQP・GVPは製造販売業者、すなわち市場への供給責任(製品に関する最終的な品質・安全責任)を持つ事業者が遵守すべき省令である。

両者は適用対象者が異なり、同一グループ内に製造業と製造販売業が混在する場合でも、それぞれの許可区分に応じた省令への個別適合が求められる。

次に多い誤解は「化粧品はGVP対応が不要」というものである。

化粧品の製造販売業者は第三種製造販売業者に該当するが、GVP省令の適用対象に含まれており、安全管理情報の収集・評価・措置実施の義務は免除されない。

適用範囲が第一種より狭い点はあるが、省令への適合は必須である。

Q6. 三役とはどのような制度か?

三役とは、医薬品・医薬部外品・化粧品等の製造販売業者における法定の責任者体制の通称であり、一般に「総括製造販売責任者」「品質保証責任者(GQP省令に基づく品質管理業務の主管者)」「安全管理責任者(GVP省令に基づく安全確保業務の主管者)」の3職を指す。

総括製造販売責任者は製造販売業者全体の品質管理および安全管理を統括する最上位の責任者である。

三役は製造販売業許可の要件として設置が義務付けられており、各者に資格要件が定められている。

なお、医療機器の製造販売業者においては、品質保証責任者に相当する役職として「国内品質業務運営責任者」(QMS省令第72条に規定)という名称が用いられるため、文脈に応じた確認が必要である。

また、令和3年(2021年)8月施行の改正薬機法により、三役の意見申述権が法定化され、製造販売業者はその意見を尊重し必要な措置を講じる義務を負う(薬機法第17条第4項等)。

あわせて、薬事に関する業務に責任を有する役員(責任役員)の薬機法上の位置付けが明確化されており、三役と経営陣・責任役員との連携体制が法令上の義務として整理された。

これにより、三役制度は現場レベルの法令適合を確保するだけでなく、経営ガバナンスと一体的に機能する仕組みとして位置付けられている。兼務は原則として望ましくないとされるが、合理性がある場合は認められることがある。

まとめ(実務整理)

GQP・GVPは、医薬品・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の製造販売業者が許可を取得・維持するための法定基準であり、製品ライフサイクルを品質管理(GQP)と安全管理(GVP)の2軸でカバーする省令体系である。

医療機器・体外診断用医薬品についてはGQP省令に代わりQMS体制省令が適用される点に留意が必要である。

GMP省令・QMS体制省令・GPSP省令との適用範囲の違いを理解したうえで、三役制度・手順書整備・記録管理という実務上の三本柱を把握することが、この分野の基本的な知識基盤となる。

コンサルティングの観点からは、許可取得支援・PMI・業務効率化・コンプライアンス整備といった多様なプロジェクトで関連する論点であり、ライフサイエンス・ヘルスケア領域を扱うファームでは実務上の出現頻度が高い。

採用面接の観点では、この種の規制要件に対する基本的な理解があることで、業界固有のオペレーション上の制約を所与の条件として組み込んだ質の高い論点整理が可能になる。

出典

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