MBB
MBBとは
「MBB(エム・ビー・ビー)」とは、戦略コンサルティング業界の頂点に立つ3大ファーム──マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)、ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group:BCG)、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)──の頭文字を取った略称である。英語圏では「Big3(ビッグ・スリー)」とも呼ばれ、世界で最も影響力を持つ戦略コンサルティング企業群として知られている。
MBBの各ファームは、成長戦略の策定や事業構造の再設計など、経営の根幹に関わる課題解決を通じて、数多くのグローバル企業や政府機関を支援してきた。戦略コンサルティングという職業の原点であり理想を体現する存在として、MBBは業界内で特別な地位を確立している。
MBBの強みと影響力
MBBの3社はいずれも、クライアントの経営の根幹に踏み込み、持続的な変革を実現することを使命としてきた。
マッキンゼーは組織変革や社会課題の解決など、経営の再構築を支援するプロジェクトを多数手がけている。BCGは経営理論と実践を結びつけ、イノベーションやデジタル変革の分野で先駆的な提言を行ってきた。ベインは実行支援やプライベートエクイティ領域に強みを持ち、戦略策定にとどまらず成果の実現まで伴走する姿勢で知られている。
MBBが手がけるプロジェクトは、企業単体の利益にとどまらず、産業構造や社会全体にまで影響を及ぼす。BCGが提唱した経験曲線やPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)といった理論は、いまや経営学の基礎を成す概念として定着している。また、マッキンゼー出身者の多くが各国政府やグローバル企業の要職に就き、世界の経営や政策形成に関わっている。こうした長年にわたる知的貢献の積み重ねが、MBBを単なるコンサルティング会社の集合体ではなく、「知のインフラ」として際立たせている。
このような卓越した地位を支えているのは、人材の質と厳格な選抜プロセスである。採用倍率は100倍を超え、合格率は1%未満ともいわれる。こうした狭き門を突破したごく少数の優秀な人材だけが、MBBのプロジェクトに携わることができる。
MBBの報酬水準は非常に高く、日本法人でも新卒入社から3年ほどで年収1,000万円前後に達し、30歳で年収2,000〜3,000万円に上るケースも珍しくない。なお、他の外資系戦略ファームも報酬水準が高く、近年はMBBとほぼ同水準となっている。
MBBの仕事と人材育成
MBBのコンサルタントは、経営の最前線で複雑な課題に向き合い、その本質を見極めることを使命としている。クライアントの意思決定を支えるため、仮説思考・データ分析・論理構築を繰り返し、課題を構造的に解き明かしていく。こうした経験を通じて磨かれるのは、知識の量ではなく、抽象度の高い思考力とそれを実行へとつなげる力である。
この高い知的要求水準を支えているのが、人材育成の文化である。MBBはいずれも教育体制に力を入れており、厳格なレビュー文化とメンタリング制度を通じて、若手を短期間で経営人材へと成長させる。論理的思考力に加え、リーダーシップやチームマネジメント、倫理観といった総合的な能力の涵養を重視する点も特徴的である。
なお、このような知的環境や育成文化はMBBに限られたものではない。他の戦略ファームでも、少数精鋭で密度の高い学習機会を提供し、実践を通じてコンサルタントの成長を支える体制が整えられている。
MBBで働く魅力
MBBが手がけるプロジェクトは、単なる企業支援にとどまらず、国家や産業の方向性そのものに影響を与える。社会や経済の変化を先導する構想を描き、その実現まで支援する点に、MBBの仕事の本質がある。経営者と同じ視座で議論し、世界規模の経営課題に取り組む経験は、他では得られない知的刺激と成長の機会をもたらす。
MBBのプロジェクトは、戦略立案にとどまらず、実行支援までを一貫して行う点が特徴だ。経営層に対して助言を行うだけでなく、現場の社員とも協働しながら、組織全体の行動変革を推進していく。その過程では、論理的思考力やデータ分析力に加えて、人を動かすリーダーシップを身につけることができる。
さらに、MBBでは業界や国境を越えて多様なプロジェクトに携わることができる。異なる文化やビジネス環境に対応しながら成果を出す経験は、どんな状況でも応用できる普遍的な問題解決力を育む。経営層と現場の双方の視点を理解し、組織変革を導く中で、実践的なマネジメント力も磨かれていく。
将来的に経営者や起業家を志す人にとって、MBBでの経験は、リーダーとしての思考力と行動力を鍛えるかけがえのない基盤となるだろう。
多彩なネクストキャリア
MBBで培われた能力は、ファーム内にとどまらず、次のキャリアでも発揮される。構造的思考、定量分析、対人折衝、実行力といったスキルは、どの業界でも通用する普遍的能力として高く評価されている。実際に、多くの出身者がPEファンド、スタートアップ、事業会社の経営企画、官公庁など、幅広い分野でリーダーとして活躍している。
MBBを志望する上で重要なのは、ブランドへの憧れではなく、自らのキャリアビジョンとの整合性を見極めることだ。MBBで得られる経験やスキルが、自分の将来像の実現にどのように結びつくのかを明確に描けるかどうかが、MBBでの貴重な経験を真に価値あるものにする鍵となる。
各ファームの特徴
MBBの比較データ
社名 | グローバル 売上高 |
本社 | 海外展開 | 日本法人の 社員数 |
---|---|---|---|---|
マッキンゼー | 160億ドル | 本社を置かず | 65ヵ国超、130超の都市 | 780名 |
BCG | 135億ドル | 米ボストン | 50ヵ国超、100以上の都市 | 1,234名 |
ベイン | 70億ドル | 米ボストン | 40ヵ国、67都市 | 298名 |
グローバル売上高はFactSet(2024年)に基づく。
日本法人の社員数は日本年金機構の厚生年金被保険者数データを参照。
マッキンゼー・アンド・カンパニー
世界65カ国以上に約130のオフィスを構え、3万人を超えるスタッフを擁する世界最大の戦略コンサルティングファームである。実績、知名度、ブランドいずれの点でも、業界を代表する存在だ。
日本では1971年に東京オフィスを開設し、2018年には大阪オフィスを新設。西日本エリアでの活動も拡大している。グローバルとローカルの知見を融合させた「グローカル」なアプローチを重視し、世界中のプロジェクトで得たノウハウを地域課題に即して活用している。
また、独自の研究機関「McKinsey Global Institute」を運営し、世界経済や産業構造の変化を分析することで、高度なコンサルティングを支えている。
マッキンゼーは人材輩出企業としても知られ、政財界や有力企業のトップ層に多くの出身者を送り出している。
▼主な出身者
- 大前研一氏(経済評論家)
- 茂木敏充氏(自民党元幹事長)
- 川本裕子氏(人事院総裁)
- 南場智子氏(ディー・エヌ・エー代表取締役会長)
- 安宅和人氏(情報学者/慶大教授)
- 谷村格氏(エムスリー代表取締役)
- 髙島宏平氏(オイシックス・ラ・大地代表取締役社長)
- 川鍋一朗氏(日本交通取締役)
- 小沼大地氏(クロスフィールズ代表理事)
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)
世界50カ国以上、100都市に拠点を構え、約2万5,000人のスタッフを擁する。1963年に米国ボストンで創設されて以来、深い洞察と分析力を武器に、企業の競争優位性の構築を支援してきた。
BCGは、経営学の教科書にも掲載されている「経験曲線効果」や「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」を提唱し、世界の経営理論と実務の双方に多大な影響を与えた。近年では「Digital BCG」を設立し、戦略とテクノロジーを融合させたデジタル変革支援を推進している。
日本には1966年に進出し、世界で2番目の拠点として東京オフィスを設立。名古屋、京都、大阪、福岡にも拠点を構え、日本に「経営戦略コンサルティング」という概念を定着させた。
▼主な出身者
- 堀紘一氏(ドリームインキュベータ創業者)
- 樋口泰行氏(元・日本マイクロソフト代表執行役会長)
- 冨山和彦氏(元・産業再生機構COO)
- 島田直樹氏(P&Eディレクションズ代表取締役)
- 渋川哲矢氏(ナガセ専務取締役)
- 岩瀬大輔氏(元・ライフネット生命取締役会長)
- 落合文四郎氏(アルー代表取締役社長)
- 上野山勝也氏(PKSHA Technology代表取締役)
- 安野貴博氏(AIエンジニア/参議院議員)
ベイン・アンド・カンパニー
本社を米国ボストンに置き、40カ国・67都市にオフィスを展開する世界的コンサルティングファームである。1973年の設立以来、戦略コンサル業界の最前線でグローバル企業を支援してきた。
ベインの最大の特徴は、徹底した成果志向にある。創業者ビル・ベインが掲げた「結果にこだわるコンサルティング」という理念のもと、コンサルティングフィーを上回るリターンを生み出すことを自らの使命としている。
また、グローバル水準のスキルを体系的に磨ける独自のトレーニング制度を有しており、密度の高い成長環境を提供している。
近年ではM&Aやサステナビリティ関連の支援にも注力し、成果創出と社会的価値の両立を目指すコンサルティングを展開している。
▼主な出身者
- 橘・フクシマ・咲江氏(G&S Global Advisors 代表取締役社長)
- 伊藤良二氏(元・同社パートナー)
- 笹沼泰助氏(アドバンテッジパートナーズ 代表パートナー)
- 妹尾輝男氏(元・コーン・フェリー日本代表)
- 前刀禎明氏(リアルディア 代表取締役社長)
- 村崎直子氏(ノブリジア代表/元・クロール日本法人代表)
- 大越一樹氏(ボードアドバイザーズ パートナー)
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