ファーストムーバーアドバンテージ

ファーストムーバーアドバンテージ(First Mover Advantage)とは、ある市場において、他社に先んじて積極的な投資を行って事業基盤を作ることにより、その市場が成長・成熟した際に他社に対して持てる優位性のことを言う。日本語では「先行者利益」。
特に世の中のコンセンサスとしてその市場の成長が確約されていない時点から積極投資を行い、後にトップシェアとなるようなケースが多い。

ファーストムーバー(先行者)が得られる利点は製品・サービスの特性により様々だが、SNSのように利用者が多いほどサービス自体の価値が高まる(=ネットワーク外部性のある)製品・サービスはアドバンテージが大きい。
他にも顧客が製品・サービスのスイッチに抵抗感を感じやすいものほど、先に顧客を抑えることによる囲い込み効果が効くため、アドバンテージが大きい。
その意味において、ジレットモデル(最初に本体を買わせて消耗品で稼ぐモデル。剃刀の本体の利益率は低く設定して拡販し、消耗品である刃は利益率を高く設定し定期的な交換需要で稼いでいたジレット(P&G)の事例より名付けられた)等との相性もよい。
他にも純粋なメリットとして長く事業をやっていることによる安心感や、学習効果による生産性向上に基づくコスト優位性のようなものもある。

近年では、AIによるビッグデータ解析の進歩や、パーソナライゼーション需要の高まりから、ファーストムーバーアドバンテージの重要度が高まっている。
競合に先んじて質の良いデータを集めることがKSF(Key Success Factor、「重要成功要因」)となるビッグデータ領域においては製品・サービスを早く上市してデータを集めることが重要である。
そのため、自動運転の開発等においては、まず公道を走ることのできる自動車及び自動運転システムを開発し、他社に先んじて走行データを取ろうという動きが活発に起こっている。

またオーダースーツなどパーソナライゼーションの場合、競合に先駆けてパーソナルデータを獲得し、その後は来店不要でオーダースーツが買えるとしてしまえば、顧客は新たな店に行ってデータを取り直すのは面倒だと考えるようになり、囲い込みが可能となる。

コンサルファームで課されるケース面接では、ある企業の5年・10年先を見据えた戦略を考えよ、というテーマの課題が出題されることも多い。
その際、その企業がいかに競争優位を保てるかということは考慮すべき重要な項目の一つであり、ファーストムーバーアドバンテージのようなモデルを知っているだけでも、回答の幅が広がると言える。

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