SmartHR
紙の書類や押印を前提とした労務手続きに、多くの人事・労務担当者が時間を取られてきた。この課題を解決する形で成長を遂げてきたのが、SmartHR(スマートエイチアール)である。
2013年の創業以来、雇用契約から社会保険手続き、年末調整までをペーパーレス化するクラウドソフトを提供し、労務管理クラウド市場でシェアNo.1の実績を重ねている。近年はタレントマネジメント(従業員データを活用した人材配置・育成支援)領域にも事業を拡大しており、人事・組織戦略やHRテック活用を扱うコンサルティング業務においても、押さえておくべき企業の一つとなっている。
SmartHRとは
SmartHR(スマートエイチアール、英文社名:SmartHR, Inc.)は、2013年1月23日、宮田昇始氏によって「株式会社KUFU」として創業された。同社は、宮田氏自身の闘病を機に感じた社会保険手続きの煩雑さを原体験として、2015年11月にクラウド人事労務ソフト「SmartHR」の提供を開始し、2017年4月には社名を現在の「株式会社SmartHR」に変更した。宮田氏は2022年1月に代表取締役CEOを退任し、以降は取締役ファウンダーとして新規事業を担当しており、現在の代表取締役は芹澤雅人氏が務めている。
「SmartHR」は当初、雇用契約の締結、入社・退職手続き、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整といった労務手続きをオンライン上で完結できるクラウドソフトとして提供された。2019年にタレントマネジメント機能の提供を開始し、その後、人事評価や従業員サーベイ、配置シミュレーション、スキル管理、採用管理などへ機能領域を広げてきた。さらに2025年4月には勤怠管理機能、同年6月には給与計算機能の提供も開始しており、労務管理からタレントマネジメント、採用、勤怠・給与計算までを含む人事・労務基幹システムへと事業領域を拡大している。
デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2025年度版」によれば、SmartHRは労務管理クラウド市場の出荷金額(2024年度実績)ベースで、7年連続の国内シェアNo.1を獲得している。
同社のミッションは「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」であり、単に労務手続きを電子化するだけでなく、労務管理を通じて蓄積される従業員データを、採用・配置・育成といった人事戦略に活用できる状態をつくることを事業の軸としている。会計・経理領域を起点に人事・労務へ事業を広げてきたクラウドサービスもある一方、SmartHRは労務管理を起点として機能領域を拡張してきた点が、同社の成り立ち上の特徴とされる。
SmartHRの主な機能領域
| 機能領域 | 概要 |
|---|---|
| 労務管理 | 雇用契約の締結、入社・退職手続き、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整などの労務手続きをペーパーレス化する基盤機能 |
| 勤怠管理 | 従業員の勤怠情報の記録・管理を行う機能(2025年4月提供開始) |
| 給与計算 | SmartHR上の従業員情報・勤怠データ等を連携させ、データ入力の手間を抑えて給与計算を行う機能(2025年6月提供開始) |
| タレントマネジメント | 人事評価、従業員サーベイ、配置シミュレーション、スキル管理など、従業員データを活用した人材マネジメント機能群 |
| 採用管理 | 候補者情報や選考結果の管理から、内定後の従業員情報登録までを支援する機能 |
| SmartHR Plus | 他社サービスと連携し、労務・人事データを活用した多様なアプリケーションを追加できるアプリストア機能 |
具体例|シェアNo.1の実績とユニコーン化
具体例として、SmartHR自身が2026年7月に公開した会社紹介資料によれば、同社は2026年4月時点で登録社数(SmartHR上で事業所登録を完了しているテナント数)が8万社を突破しており、99%以上の企業が継続利用しているという。労務管理クラウド市場においては、デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2025年度版」(2024年度の出荷金額実績)に基づき、7年連続の国内シェアNo.1を獲得したことを公表している。
同社は2021年、シリーズDラウンドで海外投資家等から156億円を調達し、企業価値評価額が10億ドルを超える「ユニコーン企業」の仲間入りを果たした。2025年5月時点の従業員数は1,457名に達しており、創業から10年余りで大きく組織規模を拡大している。
競合クラウドサービス・人事コンサルティングファームとの違い
SmartHRと混同されやすいのが、freee株式会社の「freee人事労務」やマネーフォワード株式会社の「マネーフォワードクラウド人事管理」などの競合クラウドサービス、および人事・組織戦略を扱うコンサルティングファームである。いずれも企業の人事・労務領域を支援する点で共通するが、成り立ちや提供する価値が異なる。
| 概念・提供主体 | 発展の起点 | 提供する価値 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| SmartHR | 労務手続きのペーパーレス化を起点に、タレントマネジメント領域へ機能を拡張 | 採用・労務管理から給与、人材マネジメントまでをデータでつなぐSaaS | 中堅・中小企業から大企業まで幅広い規模の事業会社 |
| freee人事労務・マネーフォワードクラウド人事管理等 | 会計・経理クラウドを起点に、人事労務機能へ事業領域を拡張 | 会計・給与・労務などのバックオフィス領域を横断して管理できるクラウドサービス | 会計・バックオフィス業務との連携を重視する企業 |
| 人事・組織コンサルティングファーム | 人事制度設計や組織開発に関する専門知見を起点とする | プロジェクト単位の助言・制度設計支援 | 人事制度改定や組織変革を検討する大企業 |
SmartHRは、労務手続きのペーパーレス化という具体的な業務課題の解決から出発し、その後、勤怠管理・給与計算・採用管理・タレントマネジメントへと機能を広げ、人事・労務領域を横断的に支援するプラットフォームへと発展してきた点に特徴がある。一方、freeeやマネーフォワードの人事労務サービスは、会計・経理クラウドとの連携を強みとして発展してきた点で成り立ちが異なる。人事・組織コンサルティングファームは、ソフトウェアの提供ではなく、制度設計や組織開発に関する専門的な助言を提供する点で異なる。
コンサルティング業務での位置づけ
SmartHRは、人事・組織戦略やHRテック活用を扱うコンサルティングプロジェクトにおいて、検討対象の一つとなることがある。
論点設計(イシュー出し)
論点設計の段階では、「対象企業の労務管理業務のどこに非効率が生じているか」「SmartHRのようなクラウドサービスの導入によって、どこまで業務を効率化できるか」といった論点を切り分けることが出発点となる。対象企業の従業員規模や、既存の労務管理体制によって、検討すべき論点の粒度は大きく変わる。
現状分析(As-Is整理)
現状分析では、対象企業の労務管理業務の現状(紙・Excelでの管理が中心か、既にクラウドサービスを導入しているか)や、人事データの蓄積・活用状況を整理する。タレントマネジメント機能をどこまで活用できているかを可視化することも、この段階の重要な作業である。
施策設計(To-Be)
施策設計では、SmartHRの導入範囲(労務管理機能のみか、タレントマネジメント機能まで含めるか)や、既存の給与計算システム・会計システムとの連携方法、社内の推進体制などを検討する。蓄積した従業員データを人事戦略にどう活用するかも、この段階で検討される論点の一つとなる。
資料作成(スライド構造)
資料作成では、SmartHRの機能構成を整理した図表、競合クラウドサービスや人事コンサルティングファームとの比較表、導入前後の労務管理業務の変化を示すイメージなどを、目的に応じた形式で整理し、経営層への提言につなげる。
コンサル採用面接で問われる理由
面接官がSmartHRという企業名そのものを直接掘り下げて質問する場面は多くない。むしろ、人事・組織戦略やHRテック活用をテーマにしたケース面接において、労務管理という定型業務の効率化と、データを活用した人材マネジメントという発展的な論点を区別して整理できるかどうかが、解答の骨格に自然と表れるという位置づけである。
ケース面接との接点としては、企業の人事・組織課題を題材にした設問で、制度設計や組織開発といった戦略的な論点だけでなく、労務手続きという実務的な業務プロセスの効率化にも目を向けられるかどうかが、論点の網羅性に影響する。特定の企業名を挙げられるかどうかよりも、HRテックの活用が人事・労務業務の構造をどう変えているかを理解しているかが重要である。
思考法としての位置づけでは、定型業務のペーパーレス化・効率化から始めて、蓄積したデータを戦略的な意思決定に活用するという発展の仕方が、人事領域に限らず、他の業務デジタル化の論点整理にも応用できる。このような視点を持っておくと、ケースの論点を広く捉える際の参考になる。企業名の詳細を覚えることよりも、業務効率化とデータ活用を段階的に結びつける考え方の骨格をおさえておくことが、十分な知識基盤になるといえる。
FAQ
Q1. SmartHRとは何か。
SmartHRとは、雇用契約や社会保険手続き、勤怠・給与計算などの労務管理から、タレントマネジメントや採用管理までをクラウド上で支援する日本のHRテック企業である。2013年1月、宮田昇始氏によって株式会社KUFUとして創業され、2015年11月にクラウド人事労務ソフト「SmartHR」の提供を開始した。2017年4月に社名を現在の「株式会社SmartHR」に変更している。デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2025年度版」によれば、労務管理クラウド市場において出荷金額ベース(2024年度実績)で7年連続のシェアNo.1を獲得している。
Q2. freee人事労務・マネーフォワードクラウド人事管理との違いは何か。
SmartHRと競合クラウドサービスの最大の違いは、発展の起点にある。SmartHRは、労務手続きのペーパーレス化を起点に、勤怠管理・給与計算・採用管理・タレントマネジメント領域へと機能を拡張してきた。
一方でfreee人事労務やマネーフォワードクラウド人事管理は、それぞれ会計・経理クラウドを起点として、給与・労務・勤怠等のバックオフィス機能へと事業領域を広げてきた経緯を持つ。既に同一ベンダーの会計システムを利用している企業では、会計・バックオフィス業務との連携を重視してこれらのサービスが選ばれる場合もあり、選定にあたっては自社の既存システムとの親和性も論点となる。
Q3. SmartHRはどのような機能で構成されているのか。
SmartHRの機能は、雇用契約の締結や社会保険手続き、年末調整などを支援する労務管理機能を基盤として、勤怠管理(2025年4月提供開始)、給与計算(2025年6月提供開始)、人事評価・従業員サーベイ・配置シミュレーション等のタレントマネジメント機能、採用管理機能で構成される。
さらに「SmartHR Plus」というアプリストア機能を通じて、他社サービスとの連携も可能となっている。労務管理を通じて蓄積された従業員データを、採用・配置・育成・給与計算といった人事・労務戦略に活用できる点が、同社のサービス全体を貫く特徴となっている。
Q4. コンサルティングの現場ではどのように扱われるのか。
コンサルティングの現場では、人事・組織戦略やHRテック活用の支援プロジェクトにおいて、SmartHRは検討対象の一つとして扱われることがある。具体的には、対象企業の労務管理業務の現状分析、複数のHRテックサービスの比較検討、蓄積した従業員データを活用した人事戦略の策定支援などが挙げられる。人事制度改定や組織変革を伴うプロジェクトでは、SmartHRのようなクラウドサービスと、人事コンサルティングファームによる制度設計を組み合わせて検討する役割を果たすこともある。
Q5. SmartHRに関するよくある誤解は何か。
よくある誤解の一つが、SmartHRを給与計算専用のサービスと捉える理解である。実際には、SmartHRは労務管理を起点として、タレントマネジメントや採用管理などへ機能を拡張してきたクラウドサービスであり、2025年6月からは自社機能として給与計算機能の提供も開始している(それ以前は他社の給与計算システムとの連携による対応が中心であった)。
また、SmartHRの導入だけで人事制度改革が完了するという理解も誤解である。蓄積したデータをどう人事戦略に活用するかは、制度設計や運用方針とあわせて検討する必要があり、ツールの導入と制度設計は別の論点として整理する必要がある。労務管理の効率化と、従業員データを活用した人材マネジメントでは、目的や評価指標が異なるため、それぞれの導入目的を整理する必要がある。
まとめ(実務整理)
SmartHRは、労務手続きのクラウド化を起点に、勤怠管理・給与計算・採用管理・タレントマネジメント領域まで事業を拡張してきた日本のHRテック企業であり、競合クラウドサービスや人事コンサルティングファームとは異なる、労務管理からデータ活用までを一気通貫で支援する価値提供を行っている。
競合サービスとの違いを整理しておくことは、人事・組織戦略やHRテック活用を検討するコンサルティング業務において、論点整理の土台として参考になる。労務管理とタレントマネジメントという機能領域の広がりを理解しておくと、クライアントへの説明にも役立つ。
採用面接との関係では、企業名の詳細を暗記する場面は多くなく、業務効率化とデータ活用を段階的に結びつける考え方の骨格をおさえておけば十分であるといえる。
出典
- SmartHR公式サイト(会社概要)
https://smarthr.co.jp/company/ - 株式会社SmartHR「会社紹介資料」(2026年7月更新、登録社数・労務管理シェアNo.1実績等)
https://speakerdeck.com/smarthr_pr/smarthr-company-introduction1 - Forbes JAPAN「SmartHR創業ストーリー」(創業の経緯・導入企業数等)
https://forbesjapan.com/articles/detail/24743 - EY Japan「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン」宮田昇始氏プロフィール
https://www.ey.com/ja_jp/entrepreneur-of-the-year-japan/eoy-japan-award/eoy-japan-2020/2020-eoy-shoji-miyata
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