Salesforce(セールスフォース)
顧客情報や商談履歴を、営業・マーケティング・カスタマーサポートの各部門でどう一元管理し、経営判断に活かすか。この問いに対する答えの一つとして広がってきたのが、Salesforce(セールスフォース)である。
1999年に米国サンフランシスコで設立された同社は、ソフトウェアをパッケージとして販売する従来型のビジネスモデルに対し、インターネットを通じてサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)の先駆けとして知られる。CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)市場で世界最大級のシェアを持ち、DX推進プロジェクトを扱うコンサルタントにとっても押さえておきたい企業・製品群である。
Salesforceとは
Salesforceは、1999年3月8日、元Oracle幹部のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)が、パーカー・ハリス(Parker Harris)、フランク・ドミンゲス(Frank Dominguez)、デイブ・モレンホフ(Dave Moellenhoff)とともに、米国サンフランシスコのテレグラフヒル地区にある1ベッドルームの賃貸アパートで法人化したことに始まる。同社は、ソフトウェアを購入・インストールする従来型のビジネスモデルに対し、インターネットを通じてサービスとして提供するSaaSの先駆的企業として知られている。
2000年2月7日には、「ソフトウェアの終焉(The End of Software)」と題したイベントでサービスを正式に開始し、「No Software」を掲げたマーケティングキャンペーンを展開したことでも知られる。なお、創業当初の社名は「salesforce.com」であったが、2022年4月に「Salesforce」へと改称された。
Salesforceは、次の3つの特徴を備える企業・製品群として整理できる。第一に、営業支援(SFA:Sales Force Automation)を出発点とし、その後カスタマーサービス、マーケティング、コマースなど、顧客に関わる業務領域全般へと事業を拡大してきたこと。第二に、AppExchange(アップエクスチェンジ:2005年に提供開始された、Salesforceの機能を拡張するアプリケーションやソリューションを提供するマーケットプレイス)を通じて、外部パートナーによるエコシステムを形成していること。第三に、Trailhead(トレイルヘッド:2014年に提供開始された、Salesforceに関する知識・スキルを無償で学べるオンライン学習プラットフォーム)を通じて学習機会を提供し、Salesforce認定資格などのスキル証明につなげられる環境を整備していること、である。
Salesforceの境界条件として、同社が2000年に立ち上げた「1-1-1モデル」(テクノロジー・人材・資金のそれぞれ1%を社会貢献に充てる仕組み)のように、事業成長と社会貢献を両立させる経営方針を早期から掲げてきた点も、同社を特徴づける要素として挙げられる。日本では2001年4月に東京拠点を設立し、事業を展開している。
Salesforceは、創業から一貫して単一の製品にとどまらず、事業領域を拡張し続けてきた点も特徴である。2003年には自社イベント「Dreamforce」を初開催し、2007年には開発者が独自のアプリケーションを構築できる「Force.com」プラットフォームの構想を発表した。
さらに2016年にはCRM向けのAI機能「Einstein」の提供を開始し、現在では生成AIやAIエージェント「Agentforce」、データ基盤「Data 360」などを含むCRM・AIプラットフォームへと領域を広げている。このように、Salesforceは単一のCRM製品を指す名称ではなく、営業・サービス・マーケティング・コマースなどの業務アプリケーションや、データ・AI・開発基盤を含む製品・プラットフォーム群として理解するとよい。
Salesforceの主な沿革
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1999年 | サンフランシスコで法人化。マーク・ベニオフら4名がSalesforce CRMの初期バージョンの開発に着手 |
| 2000年 | 「ソフトウェアの終焉」イベントでサービスを正式開始。1-1-1モデルによる社会貢献活動を開始 |
| 2001年 | 東京・ダブリンに拠点を設立 |
| 2004年 | ニューヨーク証券取引所(NYSE)に株式公開 |
| 2005年 | AppExchangeを提供開始 |
| 2014年 | Trailheadを提供開始 |
| 2016年 | CRM向けAI機能「Einstein」を発表 |
| 2022年 | 社名を「salesforce.com, inc.」から「Salesforce, Inc.」に変更 |
| 2024年〜 | AIエージェント「Agentforce」やデータ基盤「Data 360」などを展開 |
具体例・ミニケース
ある製造業B社が、営業・カスタマーサポート・マーケティングの各部門で顧客情報がばらばらに管理されており、部門間で顧客対応の履歴が共有されていないという課題を抱えていた架空のミニケースで考える。営業担当者が把握していた商談中の顧客からの問い合わせ内容が、サポート部門に伝わらず、顧客対応の質にばらつきが生じていた。
そこでB社は、営業支援・カスタマーサービス・マーケティングの機能を持つSalesforceの導入を検討した。導入にあたっては、自社に必要な機能をどこまで標準機能で賄い、どこまでAppExchangeで提供される外部アプリケーションや独自のカスタマイズで補うかが論点となった。B社は、基本的な顧客管理・案件管理は標準機能を活用し、業界特有の見積もりプロセスについては、要件に合うAppExchangeアプリケーションの活用可能性を検討し、必要に応じて独自開発も組み合わせる方針を採った。
導入後は、営業担当者が入力した商談情報や問い合わせ履歴が、サポート部門やマーケティング部門からも参照できるようになり、部門間での情報共有が進んだ。あわせて、社内担当者が継続的にSalesforceの知識を身につけられるよう、Trailheadを活用した学習環境を整えた。
このミニケースが示すとおり、Salesforceの導入は、単に一つのツールを入れることではなく、複数の部門にまたがる顧客情報の統合と、標準機能・外部アプリケーション・独自開発の組み合わせ方を設計するプロジェクトとしての側面を持つ。
他のCRM・SFAツールとの違い
Salesforceは、同じくCRM・SFA領域で提供される他社製品や、業務ごとに個別導入される専用ツールとも異なる特徴を持つ。いずれも顧客情報の管理を支援する点は共通するが、対象範囲やエコシステムの規模が異なる。
| 分類 | 対象範囲 | 特徴 |
|---|---|---|
| Salesforce | 営業・サービス・マーケティング・コマース等、顧客に関わる業務領域全般 | AppExchangeによる外部アプリのエコシステムが充実 |
| 他社の統合型CRM/SFAプラットフォーム | 営業・サービス等、複数の業務領域 | 提供企業ごとに強みとする領域や連携範囲が異なる |
| 業務特化型の単機能ツール(名刺管理・問い合わせ管理等) | 特定の業務領域に限定 | 特定の業務に必要な機能に絞って導入しやすい一方、他部門とのデータ連携が必要な場合は別途検討が必要 |
Salesforceは、営業からマーケティング、カスタマーサービスまで、顧客接点に関わる複数の業務領域を統合的に連携させる設計を志向している点が特徴であり、業務特化型の単機能ツールとは対象範囲が異なる。どちらが優れているというより、対象とする業務範囲や必要な連携、運用体制によって選択肢が異なる。
コンサルティング業務における位置づけ
論点設計(イシュー出し)
顧客情報基盤の刷新やDX推進プロジェクトでは、既存の顧客管理の課題がどの部門・業務プロセスに起因するか、Salesforceを含むCRMプラットフォームの導入でどこまで解決できるかが論点として設定されることがある。あわせて、対象とする業務範囲を営業支援に限定するか、カスタマーサービスやマーケティングまで広げるかも、初期の論点整理に含まれる。
現状分析(As-Is整理)
既存の顧客管理・営業管理の仕組みや、部門間のデータ連携状況を整理し、導入によって解決できる課題と、業務プロセス自体の見直しが必要な課題を仕分けする。
施策設計(To-Be)
現状分析を踏まえ、標準機能とAppExchangeで提供される外部アプリケーション、独自開発のいずれで対応するかを設計する。あわせて、既存システムとのデータ連携方針や、導入後の運用体制、社内担当者の育成方針も検討される。
資料作成(スライド構造)
経営層向けの提案資料では、既存の顧客管理体制とSalesforce導入後の体制を対比させ、部門間のデータ連携やユーザー体験の変化を可視化するスライドが用いられることがある。
Salesforce導入のメリットと注意点
メリット
Salesforceの導入により、営業・サービス・マーケティングなど複数部門の顧客情報を一つのプラットフォーム上で統合的に管理しやすくなる可能性がある。またAppExchangeを通じて、豊富な外部アプリケーションや業界特化型のソリューションを組み合わせられる点も特徴である。
注意点
一方で、Salesforceは機能が豊富であるがゆえに、自社に必要な機能の範囲を見極めずに導入すると、使いこなせない機能が多く残る可能性がある。また、既存システムとのデータ連携や、部門をまたいだ運用ルールの整備には相応の時間がかかるため、導入初期の設計が実務上の留意点となる。
コンサル採用面接で問われる理由
Salesforceを扱う企業・ポジションの採用面接では、製品仕様そのものに加えて、CRMやDXの課題をどのように捉えるかが問われる場合がある。
顧客データを一元管理することが、営業効率や顧客満足度の向上にどうつながるかという発想を理解しておくと、CRMやDXをテーマにしたケースでの論理展開に説得力が生まれる。そのため、製品の細かな仕様を暗記するだけでなく、顧客情報の統合や業務プロセスの見直しといった観点から考えられるようにしておくと、CRMやDXをテーマにしたケースへの理解につながる。
FAQ
Q1. Salesforceとは何か。
Salesforceとは、1999年に米国サンフランシスコで設立された、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)を中心に営業・サービス・マーケティング・コマースなどの業務アプリケーションやAI・データ基盤をクラウドで提供する企業、およびその製品・プラットフォーム群を指す。
元Oracle幹部のマーク・ベニオフら4名によって創業され、ソフトウェアを購入・インストールする従来型のビジネスモデルに対し、インターネットを通じてサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)の先駆的企業として知られる。創業当初の社名は「salesforce.com, inc.」であったが、2022年4月に「Salesforce, Inc.」へと改称された。
Q2. 他のCRM・SFAツールとの違いは何か。
最大の違いは、対象とする業務範囲とエコシステムの規模にある。業務特化型の単機能ツールが特定の業務領域に限定されるのに対し、Salesforceは営業支援(SFA)を出発点に、カスタマーサービス、マーケティング、コマースなど、顧客に関わる業務領域全般をカバーするプラットフォームとして展開している。
また、AppExchangeと呼ばれるマーケットプレイスを通じて、サードパーティ開発者が提供する多数のアプリケーションと連携できる点も、他の単機能ツールとは異なる特徴である。
Q3. Salesforceはどのように導入されるのか。
Salesforceの導入は、現状の顧客管理・営業管理プロセスの整理、標準機能とAppExchangeアプリケーション・独自開発の組み合わせの検討、データ移行・設定、ユーザーへの定着支援という流れで進められることが多い。標準機能で対応できる範囲を見極めたうえで、業界特有の業務プロセスについては要件に合うAppExchangeアプリケーションの活用可能性を検討するなど、自社の状況に応じた組み合わせが検討される。
利用者・技術者向けには、Trailheadを通じた学習機会が提供されており、そこで得た知識をSalesforce認定資格などのスキル証明につなげられる環境も整備されている。
Q4. コンサルティング業務ではどのように活用されるのか。
CRM導入やDX推進プロジェクトを支援するコンサルティングファームやSIerは、Salesforceの導入に関して、現状分析から要件定義、導入設計、定着支援まで、幅広い工程に関わることがある。具体的には、部門横断的な業務プロセスの整理、標準機能・外部アプリケーション・独自開発の切り分け、既存システムとのデータ連携設計などが挙げられる。Salesforceではコンサルタント向けを含む複数の認定資格が用意されており、専門知識を示す資格の一つとして活用されている。
Q5. Salesforceについてよくある誤解は何か。
代表的な誤解は、Salesforceを導入すれば自動的に顧客対応の質が向上すると考えるものである。実際には、既存の業務プロセスや部門間の連携ルールを見直さないまま導入しても、期待した効果が得られるとは限らない。
また、Salesforceを単なる営業支援ツールと同一視する誤解も見られるが、現在はカスタマーサービスやマーケティング、コマースなど、顧客に関わる業務領域全般をカバーするプラットフォームへと事業を拡大している点にも留意が必要である。
まとめ(実務整理)
Salesforceは、1999年に米国で設立された、CRMを中心に営業・サービス・マーケティング・コマースなどの業務アプリケーションやAI・データ基盤をクラウドで提供する企業であり、ソフトウェアをサービスとして提供するビジネスモデルの先駆けとして知られる。営業支援を出発点に、カスタマーサービスやマーケティングなど顧客に関わる業務領域全般へと事業を拡大し、近年ではAIエージェント「Agentforce」やデータ基盤「Data 360」などへと領域を広げてきた点や、AppExchange・Trailheadといった独自のエコシステムを築いてきた点を理解しておくと、実務の参考になる。
コンサルティング業務との関わりでいえば、CRM導入やDX推進プロジェクトにおいて、現状分析から導入設計、資料作成まで各局面でSalesforceが登場する場面があることを理解しておくとよい。採用面接との関係でいえば、製品の細かな仕様を暗記することよりも、顧客情報の統合や業務プロセスの見直しといった観点から考えられるようにしておくことが、CRMやDXをテーマにしたケースへの理解につながる。
出典
- Salesforce「Salesforceの沿革」https://www.salesforce.com/jp/news/stories/the-history-of-salesforce/
- Salesforce「マーク・ベニオフの略歴」https://www.salesforce.com/jp/company/marc-benioff-bio/
- Salesforce「AppExchange」公式ページhttps://www.salesforce.com/jp/products/platform/products/appexchange/
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