IOWN
急増するデータ流通量と電力消費に、既存の電子技術ベースの通信インフラはいつまで対応し続けられるのか。この課題に応える形でNTTが提唱したのが、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network:アイオン)構想である。
生成AIの普及によりデータセンターの消費電力が急増する中、光を用いた革新的な通信・情報処理基盤への転換は、通信業界のみならず、幅広い産業のインフラ戦略に関わる論点となっている。NTT、インテル、ソニーが設立した国際フォーラムには国内外の企業が相次いで参加しており、通信・エネルギー戦略やDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用した事業・業務の変革)推進を扱うコンサルティング業務においても、押さえておくべき技術動向の一つとなっている。
IOWNとは
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)という呼称は、Innovative(革新的な)、Optical(光の)、Wireless(無線の)、Network(ネットワーク)を組み合わせた、NTTによる造語である。
2019年5月9日、NTTは「NTT Technology Report for Smart World」の発表を通じてIOWN構想を提唱し、同年10月31日には、インテル コーポレーション(Intel)、ソニー株式会社(Sony)とともに、国際的な業界フォーラム「IOWN Global Forum」を設立した。同フォーラムは米国を拠点とし、その後、楽天モバイルや、2023年3月に参加したKDDIをはじめ、国内外の企業・団体が加盟する枠組みへと拡大しており、2026年4月時点では180以上の組織が参加している。
IOWN構想は、2030年に向けて段階的な実用化・高度化が進められており、大きく3つの要素技術を組み合わせて次世代のネットワーク・情報処理基盤を実現する構想である。
第一に、光技術をネットワークの各区間に導入し、光信号を活用した高速・大容量・低遅延の通信を実現する基盤技術「オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network:APN)」。第二に、現実世界の人やモノに関するデータを掛け合わせ、サイバー空間上でその相互作用を再現・予測する計算パラダイム「デジタルツインコンピューティング(Digital Twin Computing:DTC)」。第三に、こうした多様なICTリソースを効率的に制御し、全体最適を図る「コグニティブ・ファウンデーション(Cognitive Foundation:CF)」である。NTTは、従来の電子技術ベースの通信と比較して、電力効率を100倍、伝送容量を125倍、エンド・ツー・エンドの遅延を200分の1にすることを、APNにおける2030年の目標性能として掲げている。
IOWNを構成する3つの要素技術
| 構成技術 | 英語表記 | 概要 |
|---|---|---|
| オールフォトニクス・ネットワーク(APN) | All-Photonics Network | 光技術をネットワークの各区間に導入し、光信号を活用した高速・大容量・低遅延の通信を実現する基盤技術 |
| デジタルツインコンピューティング(DTC) | Digital Twin Computing | 現実世界の人やモノに関するデータを掛け合わせ、サイバー空間上でその相互作用を再現・予測する計算パラダイム |
| コグニティブ・ファウンデーション(CF) | Cognitive Foundation | ネットワークやコンピューティングリソースを効率的に制御し、全体最適を実現する基盤機能 |
具体例|APN IOWN1.0の商用化とKDDIとの技術協力
具体例として、NTT東日本・NTT西日本が2023年3月16日から提供を開始した企業向け専用線サービス「APN IOWN1.0」が挙げられる。同サービスは、拠点間を100Gbpsの専有型回線で接続するものであり、同一県内で圧縮処理が不要となる映像トラフィックを対象とした比較において、端末部分を含むエンド・ツー・エンドの遅延を従来比1/200とする低遅延を実現している。IOWNの構成技術のうち、APNではすでにこうした商用サービスが提供されている段階に至っている。
また、通信業界内の動きとして、2023年3月にはKDDIがIOWN Global Forumに参加し、NTTとKDDIが光伝送技術やモバイル関連技術の標準化に向けて協力することも発表されている。競合関係にある通信事業者同士が、次世代インフラの標準化という共通課題で連携する動きとしても注目される。
このほかにも、IOWN Global Forumには半導体・部材メーカーやクラウド事業者、金融機関、研究機関など幅広い業種の組織が参加しており、通信業界に閉じない広がりを見せている。実用化に向けた取り組みは、日本国内の実証実験にとどまらず、国際会議やワークショップを通じて各国のメンバー企業との情報交換・技術協力の形でも進められている。
5G・Beyond 5Gとの違い
IOWNと混同されやすいのが、既存の第5世代移動通信システム(5G)と、その次の世代を指すBeyond 5G(6G)である。いずれも次世代の通信インフラに関わる概念である点で共通するが、対象とする技術領域と主体が異なる。
| 概念 | 対象とする技術領域 | 主な推進主体 | 実現時期の目安 |
|---|---|---|---|
| IOWN | 光ベースのネットワーク・情報処理基盤全体(通信インフラだけでなく端末・コンピューティングも含む) | NTTが提唱し、IOWN Global Forumを通じて国際的に推進 | 2030年頃 |
| 5G | 無線通信の規格(高速・大容量・低遅延・多数同時接続) | 3GPP等が技術仕様を策定し、ITU-Rが国際的な要求条件や標準化を担う。各国・地域の通信事業者が商用展開 | 2020年前後から商用化済み |
| Beyond 5G(いわゆる6G) | 5Gの次世代にあたる無線通信規格の総称 | 総務省をはじめとする各国政府・標準化団体、通信事業者等が研究開発を推進 | 2030年頃 |
IOWNは5G・Beyond 5G(いわゆる6G)の無線通信規格そのものではなく、それらを含む通信環境を支えるネットワーク・情報処理基盤の構想と位置づけられる。総務省の資料でも、IOWN構想はBeyond 5Gを取り巻く国内外の動向の一つとして位置づけられており、NTTとKDDIがBeyond 5G/6G時代を見据えた光ネットワーク技術の標準化で協力するなど、両者は競合するというよりも、相互に関連する技術領域として捉えられている。
コンサルティング業務における位置づけ
IOWNは、通信・エネルギー戦略や新規事業開発を扱うコンサルティングプロジェクトにおいて、検討対象の一つとなることがある。
論点設計(イシュー出し)
論点設計の段階では、「対象企業・組織がIOWN関連技術のどの領域に関与すべきか」「投資判断のタイミングをどう見極めるか」といった論点を切り分けることが出発点となる。通信事業者、データセンター事業者、半導体・部材メーカーなど、関与するプレーヤーの立場によって検討すべき論点の粒度は大きく変わる。自社の中核事業との関連が薄い場合には、直接参入ではなく、既存プレーヤーとの協業や部材供給を通じた関与を選択肢に含めることも論点となる。
現状分析(As-Is整理)
現状分析では、対象企業・組織の技術シーズや事業ポートフォリオと、IOWNを構成する要素技術(光電融合デバイス、光伝送技術、デジタルツイン関連技術等)との適合度を整理する。IOWN Global Forumへの参加動向や、国内外の標準化・実証実験の進捗を踏まえ、市場としての成熟度を可視化することも、この段階の重要な作業である。あわせて、自社が保有する技術・人材が、要素技術のどの部分に応用可能かを棚卸しすることも欠かせない。
施策設計(To-Be)
施策設計では、IOWN Global Forumへの参加や、NTTグループとの協業・部材供給を通じたサプライチェーンへの参入など、対象に応じた具体的な施策を検討する。商用化までの時間軸が長期にわたることを踏まえ、段階的な投資計画をどう設計するかも、この段階で検討される典型的な論点である。
資料作成(スライド構造)
資料作成では、IOWNの構成技術を整理した図表、5G・Beyond 5Gとの比較表、商用化までのロードマップイメージなどを、目的に応じた形式で整理し、経営層への提言につなげる。
導入メリットと注意点
メリット
- 光信号のまま伝送・処理することで、既存の電子技術ベースの通信と比べて大幅な低消費電力・低遅延・大容量通信を実現できる可能性がある
- 生成AIの普及に伴うデータセンターの消費電力急増という社会課題に対応しうる技術基盤となる
- 国際的なフォーラムを通じたオープンな標準化により、特定企業に依存しない相互運用可能なエコシステムの構築が期待される
注意点
- 2030年の目標性能(電力効率100倍・伝送容量125倍・遅延1/200)はあくまで目標であり、APN・DTC・CFといった要素技術によって商用化の進捗には差がある
- 既存の電子技術ベースの通信インフラからの移行には、大規模な設備投資と長期的な時間軸が必要になる
- 国際標準化の進展や参加企業の動向によって、実用化のスピードや普及の範囲が左右される可能性がある
- 商用サービスの性能や適用条件(対象トラフィックの種類、提供エリア等)は個別のサービスごとに異なり、目標性能の数値がそのまま適用されるとは限らない
コンサル採用面接で問われる理由
面接官がIOWNという用語そのものを直接掘り下げて質問する場面は多くない。むしろ、通信・エネルギー戦略やインフラ投資をテーマにしたケース面接において、既存技術と次世代技術を技術的成熟度で区別して論点を整理できるかどうかが、解答の骨格に自然と表れるという位置づけである。
ケース面接との接点としては、通信インフラや脱炭素をテーマにした設問で、5GやBeyond 5Gといった無線通信規格だけでなく、光技術を基盤とするIOWNのような情報処理基盤全体の刷新という視点を示せるかどうかが、論点の網羅性に影響する。特定の技術名を挙げられるかどうかよりも、通信インフラの進化が複数の技術軸で同時に進んでいるという業界構造を理解しているかが重要である。
思考法としての位置づけでは、長期的な技術開発投資のリスクとリターンをどう評価するかという発想が、通信分野に限らず、研究開発投資や新規事業評価といった論点整理にも応用できる。このような視点を持っておくと、ケースの論点を広く捉える際の参考になる。用語の詳細を覚えることよりも、技術的成熟度と投資判断を結びつける考え方の骨格をおさえておけば、十分な知識基盤になるといえる。
FAQ
Q1. IOWNとは何か。
IOWNとは、NTTが2019年に提唱した、光技術を基盤とする次世代の情報通信基盤構想である。2019年5月9日にNTTが構想を発表し、同年10月31日にはインテル、ソニーとともに国際的な業界団体「IOWN Global Forum」を設立した。オールフォトニクス・ネットワーク(APN)、デジタルツインコンピューティング(DTC)、コグニティブ・ファウンデーション(CF)の3つの要素技術で構成され、2030年頃の実現を目指して研究開発が進められている。
Q2. 5G・Beyond 5Gとの違いは何か。
IOWNと5G・Beyond 5Gの最大の違いは、対象とする技術領域にある。5GやBeyond 5G(いわゆる6G)は、無線通信の規格そのものを指し、国際的な標準化団体や各国の通信事業者が主体となって推進している。
一方でIOWNは、無線通信規格にとどまらず、光技術を基盤としてネットワークから端末・コンピューティングまでを含む情報通信基盤全体の刷新を目指す構想であり、NTTが提唱し、IOWN Global Forumを通じて国際的に推進されている。両者は競合するものではなく、総務省の資料でも相互に関連する技術領域として位置づけられている。
Q3. IOWNはどのような技術・サービスで具体化されているのか。
IOWNの構成技術のうち、オールフォトニクス・ネットワーク(APN)ではすでに商用サービスが提供されている。NTT東日本・NTT西日本は2023年3月、拠点間を100Gbpsの専有型回線で接続する企業向け専用線サービス「APN IOWN1.0」の提供を開始しており、同一県内で圧縮処理が不要となる映像トラフィックを対象とした比較において、エンド・ツー・エンドの遅延を従来比1/200に低減している。
デジタルツインコンピューティング(DTC)やコグニティブ・ファウンデーション(CF)については、APNと比較するとユースケース開発や実証実験を通じた社会実装が進められている段階にあり、要素技術によって商用化の進捗には差がある。
Q4. コンサルティングの現場ではどのように活用されるのか。
コンサルティングの現場では、通信・エネルギー戦略や新規事業開発の支援プロジェクトにおいて、IOWNは検討対象の一つとなることがある。具体的には、対象企業の技術シーズとIOWN関連の要素技術との適合度分析、IOWN Global Forumへの参加動向を踏まえた市場調査、NTTグループとの協業や部材供給に関する検討支援などが挙げられる。データセンターや半導体関連企業向けのプロジェクトでは、光電融合デバイス等の要素技術をめぐる事業戦略の整理を支援する役割を担うこともある。
Q5. IOWNに関するよくある誤解は何か。
よくある誤解の一つが、IOWNを5Gの次の無線通信規格と同一視する理解である。実際には、IOWNは無線通信規格そのものではなく、光技術を基盤としてネットワークから端末・コンピューティングまでを含む情報通信基盤全体を刷新する構想であり、Beyond 5G(いわゆる6G)とは技術領域や推進主体が異なる。
また、IOWNがすべて研究開発段階の技術であるという理解も誤解である。オールフォトニクス・ネットワーク(APN)の一部は、2023年3月から商用サービスとして提供が開始されており、要素技術によって実用化の段階には差がある点に留意が必要である。
まとめ(実務整理)
IOWNは、NTTが提唱した、光技術を基盤とする次世代の情報通信基盤構想であり、オールフォトニクス・ネットワーク(APN)、デジタルツインコンピューティング(DTC)、コグニティブ・ファウンデーション(CF)の3つの要素技術から構成される。5G・Beyond 5Gとの違いや、要素技術ごとの実用化の段階を整理しておくことは、通信・エネルギー戦略や新規事業開発を検討するコンサルティング業務において、論点整理の土台として参考になる。
IOWN Global Forumへの参加動向を理解しておくと、クライアントへの説明にも役立つ。採用面接との関係では、用語の詳細を暗記する場面は多くなく、技術的成熟度と投資判断を結びつける考え方の骨格をおさえておけば十分であるといえる。
出典
- NTT公式プレスリリース「『NTT Technology Report for Smart World:What's IOWN?』の発表について」(2019年5月9日付)
https://group.ntt/jp/newsrelease/2019/05/09/190509b.html - NTT公式プレスリリース「NTT、インテル、ソニーがコミュニケーションの未来をめざして国際的なフォーラム『IOWN Global Forum』を設立」(2019年10月31日付)
https://group.ntt/jp/newsrelease/2019/10/31/191031a.html - NTT公式サイト「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」
https://group.ntt/jp/group/iown/function/apn.html - 総務省「令和7年版情報通信白書」Beyond 5Gを取り巻く国内外の動向
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd227240.html
こちらよりお問い合わせください
- 条件から探す
- カテゴリから探す