ハイパーオートメーション
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務自動化が広がる中、なぜ今、単一のツールにとどまらない「複数技術の組み合わせ」が求められているのか。RPAは特定の定型業務を自動化する強力な手段だが、対象業務の発見や、非定型的な判断を伴う工程まではカバーしきれないという限界がある。
こうした限界を超え、業務プロセス全体を通じて自動化の範囲を広げようとする発想がハイパーオートメーションであり、調査会社Gartner(ガートナー)が提唱したことで世界的に知られるようになった概念である。DXや業務改革を進めるうえでの重要なアプローチの一つとして、コンサルティング業界でも重要な技術動向として関心が高まっている。
ハイパーオートメーションとは
ハイパーオートメーションは、Hyper(超)とAutomation(自動化)を組み合わせた言葉であり、米国の調査会社Gartner, Inc.が2019年10月21日、フロリダ州オーランドで開催されたGartner IT Symposium/Xpoにおいて発表した「2020年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の中で、第1位のトレンドとして提唱した用語である。
Gartnerは2019年の提唱時、ハイパーオートメーションを、複数の機械学習(ML)・パッケージソフトウェア・自動化ツールを組み合わせて仕事を遂行することと説明し、単にツールの幅広さだけでなく、自動化そのものの各工程(発見・分析・設計・自動化・測定・監視・再評価)全体を対象とする点を強調していた。現在では、AI・機械学習、RPA、プロセスマイニングなど、複数の技術やツールを組み合わせて自動化を広げるアプローチとして、より広く理解されている。
ハイパーオートメーションでは、RPA(Robotic Process Automation:あらかじめ定義したルールに基づき、定型的なパソコン操作を代行するソフトウェアロボット)などの既存の自動化技術に加えて、AIやプロセスマイニング(Process Mining:業務システムのログデータを解析し、実際の業務プロセスの流れを可視化する技術)等を組み合わせ、RPAだけでは対応しにくい非定型業務や意思決定支援まで、自動化の対象範囲を広げていく。
GartnerもRPA単体はハイパーオートメーションではないと明言している。2019年にGartnerが2020年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドとして取り上げたことでハイパーオートメーションは広く知られるようになり、その後もGartnerの複数年にわたるトップ・トレンドで継続的に取り上げられてきた。一時的な流行語として終わったわけではなく、Gartnerは近年も、複数技術を組み合わせた業務自動化の取り組みとして、企業のDX推進における重要な分野の一つに位置づけている。
| 関連する技術・プラットフォーム | 役割 | 具体例 |
|---|---|---|
| RPA | 定型的なパソコン操作の自動化 | データ入力、転記作業等 |
| AI・機械学習 | 非定型業務の判断支援 | 画像認識、文書の自動分類、生成AIによる非構造化データの要約・意思決定支援等 |
| プロセスマイニング | 自動化対象業務の発見・可視化 | 業務プロセスのボトルネック分析等 |
| iBPMS(intelligent Business Process Management Suite) | 業務プロセス管理・自動化のためのソフトウェアプラットフォーム | ワークフロー全体の調整等 |
ハイパーオートメーションの具体例
ある保険会社H社が、保険金請求処理業務の見直しを検討するケースで考えてみる。H社ではこれまで、請求書類のデータ入力にRPAを導入していたものの、書類の内容確認や支払可否の一次判断は担当者が手作業で行っており、処理全体としてのスピードアップにはつながっていなかった。
そこでH社は、プロセスマイニングによって業務プロセス全体のボトルネックを可視化したうえで、AIによる書類の自動読み取り・分類機能を追加し、RPAと組み合わせて一連の処理を連携させる仕組みの構築を検討した。
検討の過程では、AIの判断精度をどこまで信頼して自動化するか、人によるチェック工程をどこに残すかという論点も生じ、段階的な自動化範囲の拡大を計画することとした。このケースが示すように、ハイパーオートメーションの活用は、単一ツールの導入にとどまらず、複数技術を組み合わせた業務プロセス全体の再設計を伴う取り組みである。
ハイパーオートメーションとRPA・BPAの違い
ハイパーオートメーションは、対象範囲の近さから、RPAやBPAとしばしば混同される。RPAは、あらかじめ定義したルールに基づき、特定の定型業務を自動化する個別のツールを指す言葉である。BPA(Business Process Automation:業務プロセスの自動化)は、個別タスクだけでなく、一連の業務プロセスを対象に自動化・効率化を図る考え方であり、RPAより広い範囲を対象とするが、必ずしもAIやプロセスマイニング等の複数技術の組み合わせを前提とはしない。
これに対しハイパーオートメーションは、RPAなどの既存の自動化技術に加えて、AI・プロセスマイニング等の複数の技術を組み合わせ、業務プロセス全体の自動化範囲を継続的に広げていく点で異なる。
| 概念・手法 | 対象範囲 | ハイパーオートメーションとの関係 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| ハイパーオートメーション | 業務プロセス全体の継続的な自動化拡大 | 対象そのもの | 全社的な業務自動化戦略 |
| RPA | 個別の定型業務 | ハイパーオートメーションを構成する既存の自動化技術の一つ | データ入力、転記作業等 |
| BPA | 業務プロセス全体のシステム化 | 重なる領域がある、より広い自動化概念 | 部門横断のワークフロー自動化等 |
コンサルティング業務における位置づけ
コンサルティング業務では、大企業のバックオフィス改革や、DX戦略の立案などにおいて、ハイパーオートメーションが論点となる場合がある。以下の4つの実務観点で位置づけを整理する。
論点設計(イシュー出し)
クライアント企業の経営課題が、特定業務の効率化なのか、部門横断的な業務プロセス全体の再設計なのかという論点設計から着手する。既存のRPA導入状況や、自動化のボトルネックとなっている工程を早期に把握しておくことが重要な論点となる。
現状分析(As-Is整理)
既存の業務プロセスと、導入済みの自動化ツール(RPA、AI等)の活用状況を棚卸しする。プロセスマイニング等の技術を用いて、実際の業務フローとボトルネックを可視化する作業も、この段階で行う。
施策設計(To-Be)
対象業務に適した技術の組み合わせ(RPA+AI、RPA+プロセスマイニング等)を選定し、段階的な導入ロードマップを設計する。自社単独での技術導入が難しい場合は、ITベンダーやシステムインテグレーターとの連携形態の検討も、この段階での重要な論点である。
資料作成(スライド構造)
経営層向け資料では、対象業務ごとの自動化範囲と、それによる工数削減効果や投資額を対応させたロードマップを示す構成が、投資判断を伝えるうえで有効である。あわせて、人による判断が必要な工程を残す設計思想を併記することで、投資判断がしやすい資料設計が求められる。
ハイパーオートメーション導入のメリットと注意点
ハイパーオートメーションの主なメリットは、RPA単体では対応しきれなかった非定型業務や複数部門にまたがるプロセスまで自動化の対象を広げられる可能性があることである。複数の技術を組み合わせることで、業務プロセス全体の可視化と継続的な改善につなげやすくなる点も特徴とされている。
一方で、注意すべき点も多い。第一に、複数の技術を組み合わせるため、導入・運用の複雑性が単一のRPAツールよりも高くなりやすい。
第二に、AIによる判断を業務プロセスに組み込む場合、判断の精度や説明可能性をどこまで確保するかという論点が生じる。
第三に、自動化範囲を広げるほど、既存の業務プロセスや組織体制の見直しが必要となる場合があり、技術導入だけでは効果が限定的にとどまることもある。
導入コストとしては、個別ツールの導入費用に加え、複数技術を統合的に管理する仕組みや、業務プロセスの再設計にかかる費用も考慮する必要がある。段階的に自動化範囲を広げながら効果を検証していく進め方が、実務上の選択肢の一つとなる。
コンサル採用面接で問われる理由
ハイパーオートメーションの個別技術そのものが、コンサルティングファームの面接で詳細に問われるとは限らない。ケース面接等でDXや業務改革をテーマとして扱う場合には、ハイパーオートメーションそのものの知識だけでなく、単一ツールの導入と業務プロセス全体の再設計をどう区別して考えるかという視点が重要になる。
単に「自動化すべき」と述べるだけでなく、どの工程に人の判断を残すべきかまで踏み込んで語れると、議論に厚みが生まれる。こうした視点を備えておくことは、ケース解答の質を底上げする一助になる。個別のツール仕様を暗記しておく必要はなく、業務自動化の範囲をどう設計するかという考え方の土台を理解しておけば、面接の議論の中で活用できるといえる。
FAQ
Q1. ハイパーオートメーションとは、どのような概念か。
ハイパーオートメーションとは、RPA・AI・プロセスマイニング等の複数の技術を組み合わせ、自動化できる業務プロセスをできる限り自動化しようとするアプローチである。米国の調査会社Gartnerが2019年10月に発表した「2020年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」で第1位に位置づけたことで、世界的に知られるようになった。
2020年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドとして取り上げられて以降、Gartnerの複数年にわたるトップ・トレンドで継続的に取り上げられている。
Q2. ハイパーオートメーションとRPA・BPAは、何が違うのか。
最も大きな違いは、対象とする範囲と技術の組み合わせ方にある。RPAは、定型業務を自動化する個別のツールを指す言葉である。またBPAは、業務プロセス全体のシステム化を指す、より広い概念である。
これに対しハイパーオートメーションは、RPAなどの既存の自動化技術に加えてAIやプロセスマイニング等を組み合わせ、自動化の範囲を継続的に拡大していく点で異なる。
Q3. ハイパーオートメーションは、どのように導入・活用が進められているのか。
実務における一般的な進め方は、まずプロセスマイニング等を用いて、自動化対象となる業務プロセス全体を可視化することから始まる。
次に、対象業務に適した技術(RPA、AI等)を組み合わせ、限定的な範囲で導入を進める。
活用を支えるツールとしては、RPAベンダーが提供するプラットフォームのほか、プロセスマイニング専門ツールやiBPMS(intelligent Business Process Management Suite)等があり、対象業務の性質に応じて組み合わせを選ぶことが実務上のポイントとなる。
Q4. コンサルティングの現場では、ハイパーオートメーションはどのように扱われているのか。
コンサルティング業務では、大企業のバックオフィス改革やDX戦略の立案などにおいて、ハイパーオートメーションが論点となる場合がある。テクノロジーコンサルティング領域では、業務プロセスの可視化から、技術選定、投資対効果(ROI)の試算までを一体で支援する役割を担う場合がある。金融・保険業界向けには、大量の定型・非定型業務が混在する業務プロセスの再設計という文脈で扱われることもある。
Q5. ハイパーオートメーションについて、よくある誤解は何か。
よくある誤解の一つは、RPAを導入すればそれだけでハイパーオートメーションになると考えてしまうことである。Gartner自身も、RPA単体はハイパーオートメーションではないと説明しており、複数技術の組み合わせが前提となる。
もう一つの誤解は、すべての業務を自動化できると考えてしまうことであるが、実際には人による判断が必要な工程も残るため、自動化の範囲を見極める設計が重要になる点に注意が必要である。
まとめ(実務整理)
ハイパーオートメーションは、RPA・AI・プロセスマイニング等の複数の技術を組み合わせ、業務プロセスをできる限り自動化しようとするアプローチである。
2019年10月のGartnerによる提唱以降、複数年にわたりトップ・トレンドとして取り上げられてきた経緯を理解しておくと、RPAやBPAとの違いも整理しやすくなる。DXや業務改革を進めるうえでの重要なアプローチとも重なりながら、業務プロセス全体の効率化手段として関心が高まってきた点に実務上の意義がある。
コンサルティング業務との関係でいえば、単一ツールの導入と業務プロセス全体の再設計を区別して考える視点が、DX関連プロジェクトにおいて参考になる。採用面接との関係についても、個別のツール仕様を暗記する必要はなく、業務自動化の範囲をどう設計するかという考え方の骨格を押さえておけば、十分な知識基盤となるだろう。
出典
- Gartner「Gartner Identifies the Top 10 Strategic Technology Trends for 2020」
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2019-10-21-gartner-identifies-the-top-10-strategic-technology-trends-for-2020 - Forbes「Breaking: Gartner Announces Top 10 Strategic Technology Trends For 2020」
https://www.forbes.com/sites/peterhigh/2019/10/21/breaking-gartner-announces-top-10-strategic-technology-trends-for-2020/
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