フィンテック

革新的技術を用いた金融関連サービス

フィンテックとは「金融(Finance)」と「技術(Technology)」を組み合わせた造語のこと。IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能(AI)といった技術を使った革新的な金融サービスをいう。サービスを使った消費者のライフスタイルを根本的に変える可能性がある。

フィンテックは、金融業界全体のイノベーションを推進するエンジンとして機能している。ちなみに、銀行のATMなど定型的なタスクを自動化するRPA(Robotic Process Automation)は、業務の効率化やコスト削減が目的であるため、フィンテックとは異なる。

フィンテックが進化した背景

フィンテックの進化を促した背景として、金融危機後の規制緩和があげられる。規制緩和でさまざまな企業が金融業界に参入しやすくなり、企業間競争が活発化したことで、フィンテック関連技術が発達している。

金融危機後の規制緩和として、アメリカでは、規模の小さい銀行や組合員が所有する金融関係協同組合であるクレジット・ユニオンに対して、貸付けや資本要件の緩和が実施された。これにより、フィンテック企業が金融サービスに参入しやすくなった。
イギリスでは、金融行為監督庁(FCA)が「サンドボックス」制度を導入。フィンテック企業が新しい商品やサービスを開発する際に、実際の利用者に対して試験的に提供できるように支援した。
日本では、金融庁が2016年にフィンテック企業の相談窓口「フィンテック支援デスク」を設置。2018年には、銀行業法や金融商品取引法などの規制緩和により、銀行とフィンテック企業の連携が促進された。

規制緩和と技術の進展により、フィンテック市場は拡大している。世界のフィンテック市場規模は、2022年に1589億ドルになった。市場は今後も成長を続け、2028年には4491億ドルに拡大すると予想されている。

フィンテックのさまざまな関連技術

フィンテックにはさまざまな関連技術がある。

ビッグデータ

金融機関が保有するビッグデータは、顧客の取引履歴や口座情報、クレジットカード情報、保険契約情報などをいう。ビッグデータは、金融機関が顧客の行動や嗜好を分析し、より効果的なマーケティング戦略を立てたり、リスク管理を行ったりするために活用される。また、ビッグデータは、人工知能(AI)や機械学習などの技術と組み合わせることで、より高度な分析が可能になる。

ビッグデータは金融機関以外の企業でも活用される。例えば、小売業界では、ビッグデータを活用して、顧客の購買履歴や嗜好を分析し、効果的な販売戦略策定や在庫管理ができる。また、製造業界では、ビッグデータを活用して、製品の品質管理や生産性の向上などに役立てることができる。

IoT

フィンテックにおけるIoT(インターネット・オブ・シングズ)とは、金融サービス業界でIoT技術を活用したサービスやソリューションをいう。IoTは、インターネットに接続されたさまざまなデバイスやセンサーがデータを収集、共有し、リアルタイムでの情報交換や自動化された意思決定を実現する技術だ。

フィンテックにおけるIoTの活用は、以下のような用途がある。

・モバイル決済

IoTデバイスを活用した決済システムにより、スマートフォンやウェアラブルデバイスを使った簡便で安全性が高い支払いが可能になる。例えば、NFC(Near Field Communication、近距離無線通信規格)技術を用いたモバイルウォレットやスマートウォッチでの支払いが挙げられる。

・保険業界への応用

IoTデバイスを活用したリアルタイムな資産追跡や管理が可能になる。例えば、GPSやRFID(Radio-Frequency Identification)技術を用いたトラッキングシステムが挙げられる。GPSは衛星からの信号を受信して位置情報を取得する技術で、屋外での利用に適している。RFIDはICタグによって識別された物品の位置情報を取得する技術で、屋内でも利用可能だ。これらの技術を組み合わせることで、より正確な資産の現在地や状況を把握することができる。

・クレジット評価

スマートフォンやスマートメーターといったIoTデバイスから得られるデータを利用して、個人や企業のクレジットスコアリングに活用することができる。クレジットスコアリングは、「スコアリングシステム」とも呼ばれる。統計的モデルに基づいて、個人や企業の信用度を点数化し、与信可否を迅速で中立的に判断するシステムをいう。多様なデータを取り入れることで、信用評価の精度が向上し、リスク管理が効果的に行える。

・スマートコントラクト

IoTデバイスとブロックチェーン技術を組み合わせることで、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行型の契約が可能になる。これにより、契約の主体は、取引プロセスが効率化され、コスト削減や時間短縮を実現できる。

・生体認証

フィンテックで使われる生体認証には、顔認証、指紋認証、虹彩認証、声紋認証などがある。
顔認証は、スマートフォン等のカメラを使って顔を撮影し、その特徴を抽出して比較することで本人確認を行う。
指紋認証は、指先にある指紋を読み取り、本人確認を行う。虹彩認証は、虹彩の模様を読み取り、本人確認をする。
声紋認証は、声の特徴を読み取り、本人確認を実施する。
生体認証は、パスワードや暗証番号などと比べて高い安全性がある。また、スマートフォンなどのデバイスに搭載されているため、利用者にとって利便性が高い。

・ウェアラブルデバイス

フィンテックにおけるウェアラブルデバイスとは、決済などの金融サービスを利用する際に、身に着けることができるデバイスのことをいう。スマートウォッチやスマートリング、スマートグラスなど、さまざまな形態がある。

・ブロックチェーン

フィンテックにおけるブロックチェーンとは、取引記録を分散型の台帳に記録する技術である。分散型データベースの一種であり、取引情報や契約内容などのデータを暗号化して、複数のノード(コンピュータ)に分散して保存する。
取引記録をブロックと呼ばれる単位でまとめ、それらをチェーンのようにつなげていくことで、改ざんや不正を防止する。
また、ブロックチェーンは、中央管理者を必要とせず、参加者同士が対等な関係でデータを共有することができるため、大幅なコスト削減が可能になる。
ブロックチェーン技術の応用であるビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、国際送金や決済手段として利用されている。ブロックチェーン技術はスマートコントラクトにも使われている。

・AI(人工知能)

金融サービスにおいて、人工知能を活用することで、より効率的な業務処理や顧客サポートを実現することができる。例えば、人工知能を活用したロボアドバイザーは、顧客の投資目的やリスク許容度などを分析し、最適な投資商品を提案することが可能だ。また、人工知能を活用したクレジットスコアリングでは、顧客の信用情報や行動履歴から、信用スコアを算出し、迅速で正確な審査を行うことができる。

フィンテック関連技術によって、金融業界における効率化や利便性の向上、セキュリティの強化などが実現した。金融機関や企業が、フィンテック関連技術を活用して新しい金融サービスやビジネスモデルを生み出すことで、社会全体のイノベーションを促す可能性もある。
しかし、技術の発達によってデータのプライバシーや安全性、倫理的な問題が出てくる可能性もある。社会全体におけるメリットとデメリットを総合的に判断した取り組みが必要となる。

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