Zeroboard(ゼロボード)

Zeroboard(ゼロボード)とは、企業のGHG(温室効果ガス)排出量やESG関連データの算定・可視化・開示を支援する、株式会社ゼロボードが提供するクラウド型ソリューションである。

サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を、どのように正確かつ効率的に把握すればよいのか。この問いは、気候関連財務情報の開示が国内外で制度化されるなかで、多くの企業が直面する実務課題となっている。

従来はExcelなどによる手作業での排出量集計が中心であったが、拠点数や取引先が多い企業ほど、データ収集や排出係数の管理にかかる負荷が大きくなる。こうした背景から、GHG排出量の算定・可視化を専門とするクラウドサービスの活用が広がっており、その代表例の一つがZeroboardである。

Zeroboardとは

Zeroboardは、株式会社ゼロボード(Zeroboard Inc.)が開発・提供するクラウド型サービスであり、企業のGHG(温室効果ガス:Greenhouse Gas、地球温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンなどのガスの総称)排出量の算定・可視化・開示を中心に、ESG(環境・社会・企業統治)関連データを幅広く扱う「Zeroboard Sustainability Platform」へと展開している。

株式会社ゼロボードは、エアモビリティ(空飛ぶクルマ)分野のスタートアップとして知られるA.L.I. Technologies株式会社が2021年3月に発表した「zeroboard」事業を、渡慶次道隆氏がMBO(Management Buyout:経営陣が自ら事業や会社の株式を買い取り独立する手法)によってスピンオフする形で、2021年8月24日に設立した企業である。

Zeroboardは、企業活動全体の排出量に加え、サプライチェーンを構成する取引先の排出量までを含めた算定に対応している。算定対象は、国際的な排出量算定基準であるGHGプロトコル(GHG Protocol:米国のシンクタンクである世界資源研究所(WRI)と経済団体である持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)が策定した、温室効果ガス排出量の算定・報告に関する国際基準)が定めるScope1(自社の燃料燃焼等による直接排出)、Scope2(購入した電力・熱等の使用に伴う間接排出)、Scope3(原材料調達や製品の使用・廃棄など、自社以外のサプライチェーンで生じる間接排出)の3区分に対応するほか、製品・サービス単位の排出量を示すCFP(Carbon Footprint of Products:製品のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス排出量)の算定機能も備える。

国内のサプライチェーン排出量算定で参照される、環境省・経済産業省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に対応した算定が可能であり、SSBJ(サステナビリティ基準委員会:Sustainability Standards Board of Japanの略称で、日本国内のサステナビリティ開示基準を策定する組織)など国内外のサステナビリティ開示基準への対応も進められている。なお、SSBJ基準の適用は東証プライム市場上場企業を対象に時価総額に応じて段階的に義務化される予定であり、すべての企業に一律で適用されるものではない。

また、株式会社ゼロボードは、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)のグループ会社であるAIST Solutions株式会社と業務提携し、AIST-IDEA(世界最大級規模とされる排出原単位データベース)のうちサプライチェーン排出量の算定に必要な項目を厳選したパッケージをZeroboardに標準搭載している。排出原単位とは、活動量(電力使用量や燃料使用量等)あたりの温室効果ガス排出量を示す係数であり、活動量に応じた排出量を算定する際に用いる重要な要素の一つである。適切な原単位を選択することが、算定結果の妥当性を確保するうえで重要となる。

主なサービス 概要 主な用途
Zeroboard サプライチェーン全体のGHG排出量算定・可視化、環境項目の一元管理 Scope1〜3排出量の算定、グループ企業のデータ集約
Zeroboard CFP 製品・サービス単位のカーボンフットプリント算定 ホットスポット分析、製品別の排出量開示
Zeroboard ESG SSBJ・CSRD・有価証券報告書などのサステナビリティ開示に必要なESGデータの収集・分析を支援 法定開示に向けたデータ整備
Dataseed サプライヤー情報を動的に一元管理し、最新情報の維持やリスク管理を支援 サプライチェーン上の取引先データ連携
Dataseed SAQ サプライヤーへの自己評価アンケート(SAQ)の送付・回答・分析・管理を効率化 サプライヤーのESG評価・エンゲージメント

具体例・ミニケース

公表されている導入事例の一つに、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)がある。同社の公式事例によれば、従来は各部門からのExcelデータを手作業で集計しており、その作業に約1週間を要していたが、Zeroboard導入後は770拠点分のデータを一元管理できるようになり、集約作業が1日で完了するようになった。結果として作業時間は約7分の1に短縮されたとされている。

あわせて、証跡管理やアクセス権限の設定により、SSBJ開示対応や第三者認証の取得に向けたガバナンス強化も両立させたことが公表されている。多数の拠点を持つ企業では、拠点ごとに算定ルールや排出係数がばらつきやすく、Excel等での手作業管理では整合性の確保が難しくなる。Zeroboardのようなクラウド型サービスを用いることで、拠点横断でのデータ管理ルールを統一しながら、開示に必要な精度を確保しやすくなる点が、こうした事例における活用の背景にあるといえる。

株式会社ゼロボードの公式サイトによれば、2026年4月末時点でグループ企業を含め15,000社超がZeroboardを利用しており、製造業、商社、金融、運輸など幅広い業種で導入が進んでいる。

また、岩谷産業株式会社の事例として、看板商品であるカセットガス製品のCFP算定にZeroboardを活用し、算定結果の社内外への公表を実施したことが、株式会社ゼロボードの事例紹介として公表されている。同社ではこのCFP算定・可視化を第一歩として、算定値をもとにJ-クレジットでオフセットした「カーボンオフセットカセットガス」を2025年春に発売しており、組織単位のScope1〜3排出量だけでなく、製品単位のカーボンフットプリントの算定・開示が、具体的な製品開発のアクションにまでつながっている事例といえる。

Zeroboardと他のGHG排出量把握手法との違い

企業がGHG排出量を把握する方法は、Zeroboardのようなクラウド型サービスに限られるわけではない。Excelによる手作業集計、会計事務所やコンサルティング会社による個別の算定支援、会計・購買システムに付随する拡張機能など、複数の選択肢が存在する。それぞれデータの更新性や第三者検証への対応のしやすさが異なる。

把握方法 特徴 データ更新・拡張のしやすさ 第三者検証への対応
Excel等での手作業集計 初期費用を抑えやすいが、拠点・取引先が増えると管理負荷が高まりやすい 拠点数が多いほど属人化しやすい 証跡の整理に個別対応が必要
会計事務所・コンサルによる個別算定支援 専門家の知見を都度得られるが、継続的なデータ更新は別途仕組みが必要 依頼のたびに個別対応 支援内容次第で対応可能
会計・購買システムの拡張機能 既存システムとの連携はしやすいが、Scope3等の専門的な算定機能は限定的な場合がある 既存データとの連携に依存 機能次第で異なる
Zeroboardのようなクラウド型算定・可視化サービス Scope1〜3やCFPなど専門的な算定機能を備え、拠点・サプライヤーを横断したデータ収集がしやすい 入力データをリアルタイムで反映できる 証跡管理・承認ワークフローなど、第三者検証を見据えた管理機能を備える

コンサルティング業務における位置づけ

論点設計(イシュー出し)

脱炭素経営やサステナビリティ開示を支援するプロジェクトでは、クライアントがどの制度対応(SSBJ、TCFD等)を優先すべきか、どの拠点・サプライヤーから排出量算定に着手すべきかを論点として整理する段階がある。この段階で、Zeroboardのようなツールが対応できる範囲(Scope1〜3、CFP等)を把握しておくと、論点と実現手段の対応関係を整理しやすくなる。

現状分析(As-Is整理)

現状分析の段階では、クライアントが現在どのような方法(Excel、個別のコンサル支援、既存システムの拡張機能等)で排出量を把握しているかを整理し、データの精度や更新頻度、属人化の度合いを確認することが重要になる。この整理が、後続のツール選定や体制構築の判断材料となる。

施策設計(To-Be)

施策設計の段階では、算定体制をどこまで自社で内製化し、どこからクラウドサービスや外部の専門家の支援を活用するかを設計する。Zeroboardのような算定・可視化サービスの活用は、拠点・サプライヤーが多い企業において、データ収集や開示対応の効率化を図る選択肢の一つとして検討されることが多い。

資料作成(スライド構造)

資料作成の段階では、現状の課題とツール導入によって解消される点を対比させ、開示制度への対応スケジュールと合わせて整理しておくことが、クライアントへの説明において重要になる。

コンサル採用面接で問われる理由

コンサルティングファームの採用面接において、Zeroboardという個別の製品名そのものが直接問われる場面は多くない。ただし、脱炭素経営やサステナビリティ開示支援がGX(グリーントランスフォーメーション)関連のコンサルティング領域として拡大するなか、GHG排出量算定の基本的な考え方(Scope1〜3の区分等)を理解しておくと、関連するケースや業界動向についての議論に対応しやすくなる。背景にある制度や考え方の骨格をおさえておけば、面接対策として十分な知識基盤になると考えられる。

FAQ

Q1. Zeroboardとは何か。

Zeroboardとは、株式会社ゼロボードが提供する、企業のGHG排出量やESG関連データの算定・可視化・開示を支援するクラウド型ソリューションである。Scope1〜3の排出量算定や、製品単位のカーボンフットプリント(CFP)算定に対応しており、単独企業だけでなくサプライチェーン全体のデータ収集にも活用できる。2021年に、エアモビリティ分野のスタートアップであるA.L.I. Technologies株式会社からスピンオフする形で設立された株式会社ゼロボードが開発・提供しており、2026年4月末時点で、グループ企業を含め15,000社が利用している。

Q2. ZeroboardとExcelでの手作業管理や個別のコンサル支援はどう違うのか。

Excelでの手作業管理は初期費用を抑えやすい一方、拠点や取引先が増えるほどデータの整合性確保が難しくなりやすい。会計事務所やコンサルティング会社による個別支援は専門知見を得やすいが、継続的なデータ更新には別途仕組みが必要になる。Zeroboardのようなクラウド型サービスは、Scope1〜3やCFPといった専門的な算定機能をあらかじめ備え、拠点・サプライヤーを横断したデータ収集をクラウド上で行える点が特徴であり、継続的な算定・開示業務との親和性が比較的高い。

Q3. Zeroboardはどのように導入するのか、どのようなツール・機能が使われるのか。

Zeroboardの導入・運用では、算定対象範囲の確認、データ収集、算定、開示に向けたデータ整理などを、企業の目的や体制に応じて進める。対象範囲の確認では、算定対象とする拠点やサプライチェーンの範囲を整理し、データ収集の段階では、各拠点や取引先からエネルギー使用量等のデータを収集する。

算定の段階ではScope1〜3やCFPの算定機能を用い、開示の段階では、SSBJ等の制度に対応したレポート出力機能や、Dataseed SAQのようなサプライヤーへのアンケート収集機能が活用される。なお、株式会社ゼロボードは、ツールの提供にとどまらず、導入支援やBPO(業務代行)、算定支援、第三者検証支援なども提供しており、企業がすべての工程を自力で担う必要があるわけではない。

Q4. Zeroboardはコンサルティングの実務でどのように活用されているのか。

実務では、脱炭素経営やサステナビリティ開示支援を行うコンサルティング会社・専門家が、クライアント企業の算定体制構築を支援する際のツールの一つとして、Zeroboardのようなクラウドサービスを紹介・導入支援するケースがある。株式会社ゼロボード自身も、ツール提供にとどまらず、算定プロセスの設計・運用支援や、中長期的な削減目標の設定に関する助言など、サステナビリティ経営に関するコンサルティングを提供している。

Q5. Zeroboardに関するよくある誤解は何か。

よくある誤解の一つは、Zeroboardを導入すれば排出量算定や開示対応がすべて自動的に完結すると考えることである。実際には、対象範囲の設定やデータの収集・入力、算定ルールの社内合意形成など、企業側での準備や運用体制の構築が引き続き必要になる。

また、「GHG排出量算定サービス」と一括りにされがちだが、Zeroboardはサプライヤー管理(Dataseed)やESG法定開示対応(Zeroboard ESG)など、GHG算定以外の機能も展開しており、単一機能のツールに留まらない点にも留意が必要である。

まとめ(実務整理)

Zeroboardは、企業のGHG排出量やESG関連データの算定・可視化・開示を支援するクラウド型ソリューションであり、サプライチェーン排出量の開示や脱炭素経営が企業の重要な経営課題となるなかで、活用が広がっている。

ハイクラスなコンサルティングキャリアを目指すうえでは、こうしたサステナビリティ関連のツールやその背景にある制度(Scope1〜3、SSBJ等)を理解しておくと、関連プロジェクトへの理解を深めるうえで参考になる。採用面接との関係でいえば、個別の製品名を丸暗記する必要性は高くなく、GHG排出量算定の基本的な考え方を、ベーシックな知識として概要でおさえておく程度で十分な理解につながると考えられる。

今後、SSBJの適用対象拡大や海外の開示規制(CSRD等)への対応が国内企業にも求められていくなかで、Zeroboardのような算定・可視化ツールの位置づけは、単なる集計の効率化にとどまらず、開示の信頼性を支える基盤としての意味合いを強めていく可能性がある。サステナビリティ関連のコンサルティング業務に携わる、あるいは検討するうえで、こうしたツールの機能と限界の両方を把握しておくことは、クライアントへの提案の幅を広げる材料になり得る。

出典

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