社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)

社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)とは

社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)とは、物質的・金銭的欠如だけではなく、居住、教育、保健、社会サービス、就労など、さまざまな領域において個人が排除され、社会的交流や社会参加も阻まれた状態をいう。
社会的排除の対義語が「社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)」だ。社会的包摂は、社会の中で個人または集団が自己実現を図ることができるように支援することをいう。社会的排除を防ぐためには、社会的包摂が必要である。

1980年代の欧州において、脱工業化とグローバリゼーションが顕著となり、若者の長期失業や不安定雇用など新たな社会問題が生じた。脱工業化とグローバリゼーションが、経済構造の変化や地域間格差の拡大をもたらし、一部の人々が社会的排除を経験することになった。
EUは社会的排除そのものの撲滅と、社会参加の可能性を保障する社会的包摂施策の推進を加盟国共通の目標に掲げた。貧困などの問題をより広く解決するための解決策という位置付けだ。

日本では、1990年代に浮上したホームレスや格差など、新たな社会問題の背後に、社会的排除の累積や連鎖があるといわれている。国立社会保障・人口問題研究所によると、離婚、解雇、傷病、15歳時の生活苦等、過去の不利な要因が、現在の社会的排除に深く関連していると考えられている。

2000年12月に厚生労働省が「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」の報告書を発表した。報告書では、「すべての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」ことを社会的包摂としている。
対象者を「すべての人々」としている点や「健康で文化的な生活の実現を社会的包摂の目的としている」ことなどが特徴だ。

社会的排除を防ぐことを目的とする条約もある。2006年に採択された障害者権利条約は、障害者の人権と基本的自由を保護し、社会的排除を防ぐことを目的としている。

障害者は、偏見や差別によって社会的排除を経験し、教育、雇用、医療、住宅、交通、文化活動へのアクセスが制限されることがある。条約は、障害者が平等で自立した生活を送ることができるように支援するための国際的な枠組みを提供している。

社会的排除を防止していくためには、政府や地域社会が、教育や職業訓練、雇用創出、社会保障制度の充実などによって、社会的包摂を促進する施策を講じることが重要だ。

企業も、多様なバックグラウンドを持つ人々に対する雇用機会の提供や、労働者の賃金、労働条件、教育・研修の機会の提供といった、労働者の待遇と権利の改善に取り組む必要がある。

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