BOP(BOPビジネス)

BOP(BOPビジネス)とは、途上国等の低所得層をターゲットに有益な製品・サービスを提供することで、当該国の生活水準の向上に貢献しつつ、企業の発展にもつながる持続的なビジネスのこと。「Base of the Economic Pyramid」の略で、BOP層とは年間所得が購買力平価(PPP)ベースで3,000ドル以下の低所得層示す。独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、開発途上国を中心に世界人口の約7割を占めるとも言われている。

BOPビジネスが注目されている理由は、開発途上国の経済成長に伴い、BOP層の所得も向上することが期待されているからだ。現在、BOP層に属していると推定されているおよそ40億人が、将来的には中間所得層に移行する可能性があると予測されている。中間所得層の増加により、企業は新たな市場「ネクスト・ボリュームゾーン」にチャンスを見出し、販売拠点やブランド展開、ネットワーク構築などに取り組み始めている。
BOPビジネスとSDGs(持続可能な開発目標)は密接に関連している。SDGsで指定されているゴールのうちの「貧困の撲滅」、「暴力や飢餓の解消」、「環境保護」、「持続可能な経済成長」などの達成のために、BOPビジネスは寄与できる可能性がある。

 

BOPビジネスとは、具体的にどのようなビジネスなのか。BOPビジネスの成功事例として、ユニリーバによるインドの農村地域での石鹸販売がある。
ユニリーバは、1日2米ドル以下とされるBOP層の所得に合わせ、使い切りの石鹸を販売した。インドの農村部では、石鹸で手を洗う習慣がないなど、公衆衛生が整備されておらず、感染症による下痢などで多くの人が命を落としていた。
そこで、ユニリーバは現地の女性住民を中心に衛生教育セミナーを開催し、彼女らを販売員として雇う制度を採り入れたことで、女性の雇用が創出され、女性の自立や社会進出の促進につなげた。
インドの農村部での石鹸販売は、ユニリーバ自体に莫大な利益をもたらしただけではなく、ビジネスと社会貢献の両立・現地社会の発展を実現したとして、BOPビジネスの代表例となっている。

ユニリーバの事例のように、BOPビジネスは、SDGs達成のための有効な手段のひとつと考えられる。BOP層の手の届く範囲で、質の高い商品やサービスが提供されるようになれば、教育、健康や福祉に関する問題を解決できる可能性がある。より安全で快適な環境整備にもつながる可能性がある。

BOP層を約40億人とすると、市場規模は約5兆ドルといわれる。これは、日本のGDP(国内総生産)に匹敵する規模だが、課題もある。それは低所得者層を対象としているため、短期的に大きな利益を上げることは難しいとされていることだ。そのため、企業は中長期的な視点でビジネスを展開する必要がある。
また、BOP層のニーズを満たす製品やサービスを開発するには、従来のビジネスモデルではなく、新たなアプローチが必要だ。企業が新たなアプローチをするには、企業の意識改革や経営手法の変更が欠かせない。

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