シビックテック

シビックテック(civic-tech)とは、市民がテクノロジーを活用して、社会や地域が抱える課題・問題の解決を目指し、その環境づくりや取り組みを行う技術の総称を指す。課題・問題は、少子高齢化や都市への人口集中、コロナ禍で深刻化する社会的孤立など、多岐にわたる。
市民(Civic)と技術(Technology)をかけ合わせた造語で、シビック・テクノロジー(civic technology)とも呼ばれる。

シビックテックは米国で発祥した。米国政府は多くの時間と予算をかけ、行政サービスを市民に提供してきたが、2000年代以降、多様化する市民の要望をかなえることが困難になった。そこで、オライリーメディア社の創始者ティム・オライリー氏が、多くの社会課題に向き合い、新たなサービスやビジネスモデルの創出を目指す「ガバメント2.0」を提唱したのを機に、シビックテックの取り組みが始まった。

その事例が2009年、米国で発足した非営利組織「Code for America」だ。シビックテックの先駆けとなり、現在では世界のシビックテックを代表する存在となった。

「Code for America」のアプローチは、全米から募ったITエンジニアを米国政府や自治体に「1年間限定の派遣」で提供するというものだ。行政府などに派遣されたエンジニアたちを「フェロー」と呼ぶ。彼らはそれぞれの派遣先の課題や問題点を担当スタッフにヒアリングし、ウェブサイトの改善やアプリの開発に従事する。

また、イベントを開催して市民の声を集め、ウェブサイトの構築に反映することもある。そういった働きが世界中に知れわたり、各行政府が抱える課題を解決するためのプロジェクトへの参加を希望するエンジニアの数は、年を追うごとに増加している。「Code for America」は、民間のスキルを行政の問題解決に役立てるプラットフォームとして絶大な支持を得ている。

日本国内では2013年5月、石川県金沢市でIT技術を活用した地域課題の解決をめざす市民団体「Code for Kanazawa」が立ち上がったことをきっかけに、各地でさまざまな活動が展開されるようになった。その多くは市民が抱える悩みや課題に寄り添い、その解決を支えていくという草の根的な取り組みであった。

その後、米国のような行政府とシビックテックの連携で注目されたのが、2011年3月11日の東日本大震災後の対応だ。民間企業が安否確認のためのサイトを立ち上げ、全国の個人エンジニアたちが救援物資や交通情報、電力使用量など震災関連の情報提供サイトを構築するなど、市民主導で行政を支援した。

近年はコロナ禍などの影響はもとより、社会環境が変化し人々の生活スタイルも多様化。地域社会が抱える課題はますます複雑化している。このように一変した日常生活のあり方も含め、地域のさまざまな課題を解決しようというシビックテックの取り組みに注目が高まっている。

シビックテックには、官→民の流れだけでなく、民→官の流れも重要となる。政府側だけが責任を果たすのではなく、お互いの共創活動のためには今後、官民の垣根を超えて、社会をあるべき姿に近づけるための対話が必要となる。

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