ソーシャルデザイン

ソーシャルデザインとは、社会的課題を解決するために、都市の構成要素や制度、インフラなどを設計することを指す。「社会づくり」や「街づくり」というのが、一般的な表現だ。ソーシャルデザインによって、育児や教育、福祉、災害対策、産業など、さまざまな課題の解決に取り組み、より良い社会を築くことを目指している。

ソーシャルデザインが近年注目されている背景には、気候変動により加速する地球温暖化をはじめとした地球規模の「危機」、爆発的な人口の増加、貧困格差の拡大などがある。従来の方法では解決が困難なこうした社会問題に立ち向かうには、社会全体の枠組みや人々の参画の仕方を変えていく必要があり、ソーシャルデザインによりこれが実現する可能性がある。ソーシャルデザインが対象とする問題は、地域社会レベルから、グローバルまで、幅広い範囲に及ぶ。

高齢化社会に対応した持続的で柔軟な地域医療提供の実現に向けて、富士通と津田塾大学がソーシャルデザインの共同研究を開始した。地域全体で、疾病予防や治療、予後などの各段階に応じて患者が受ける医療や健康サービスの流れ(ケアパスウェイ)をデジタル化する。実証経済学の知見に基づき、患者の状態を予測するAIの技術を利用し、医療提供体制の偏りや入院の長期化を解消することが期待されている。

海外では、アムステルダムの「WASTED」プロジェクトが有名だ。このプロジェクトでは、市民がプラスチック廃棄物のリサイクルに参加することで地域通貨を獲得でき、その地域通貨を地域のビジネスで使用できるようにすることで、持続可能な廃棄物管理を促進している。
このような形で、ソーシャルデザインは地域コミュニティと協力し、環境負荷の軽減と地域経済の発展を同時に達成しようとしている。

ソーシャルデザインに取り組むコンサルティングファームもある。
株式会社NTTデータ経営研究所は、“ひと中心のソーシャルデザイン”に関するコンサルティングサービスを展開。「ソーシャルデザイン推進室」を新設し、一人ひとりのwell-beingを大切にした社会の実現に向け、地域のWell-beingの可視化、ひと中心地域づくりISO、地域未来デザインラボ、行動デザイン・ナッジ、人間中心テクノロジー、ひと中心のEBPMなどのサービスを展開している。

ソーシャルデザインは、街づくりや社会づくりにおいて重要な役割を果たしている。
しかし、ソーシャルデザインにはいくつかの課題も存在する。意思決定プロセスの複雑さや多様なステークホルダーの関与を調整することの難しさが挙げられる。
また、資金やリソースの調達の難しさも課題となっている。ソーシャルデザインを成功させるには長期的な視点や地域の文化、環境に対する理解が欠かせない。これらのこと課題を解決するために、プロジェクトマネジメント的な立場でコンサルティングファームが関係することも今後増えると予想される。

ソーシャルデザインは、社会の課題解決にデザイン思考を適用することで、社会全体の利益に対する新たな視点と解決策を提供する。ソーシャルデザインは、社会の様々な問題解決に大きな可能性を秘めており、今後注目の分野と言える。

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