グリーン電力
再生可能エネルギー由来の電気を使いたいと考えても、実際に契約している電力そのものを切り替えずに、その環境価値だけを調達する方法はあるのか。
この問いに対して、日本で最も早い時期から整備されてきた答えのひとつが、グリーン電力(Green Power)、とりわけグリーン電力証書という仕組みである。
再生可能エネルギーによって発電された電力が持つ「環境価値」を、電力そのものとは切り離して証書化することで、電力契約を変更しなくても、一定の制度要件を満たす場合には、証書の購入を通じて実質的に再生可能エネルギーを利用したとみなすことができる。
2000年代初頭から民間主導で整備が進められてきたグリーン電力証書は、非化石証書やJ-クレジットといった後発の制度とも一部重なりながら、現在も企業の環境価値調達の選択肢のひとつとして活用されている。
サステナビリティ経営やエネルギー戦略に関わるコンサルティング業務において、グリーン電力の歴史的経緯と関連制度との違いを理解しておくことは実務上の意義を持つ。
グリーン電力とは
グリーン電力証書制度は、2000年11月、日本自然エネルギー株式会社が、日本で初めて民間によるグリーン電力証書の商品企画を発表したことに始まる。
翌2001年6月には、第三者認証機関として制度を運営するため、任意団体である「グリーン電力認証機構」が設立され、事務局は財団法人日本エネルギー経済研究所内に置かれた。
その後、資源エネルギー庁は2008年2月、総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の下に「グリーンエネルギー利用拡大小委員会」を設置し、グリーン電力証書のさらなる普及拡大策を検討した。同年4月には、電力だけでなく熱についても幅広く証書化の対象とすべく、「グリーンエネルギー認証センター」が財団法人日本エネルギー経済研究所に付置される形で設立され、同年、資源エネルギー庁による「グリーン電力証書ガイドライン」が発行された。
このガイドラインは、現在に至るまでグリーンエネルギー認証制度の運営の基礎となっている。認証事業は、2018年4月、日本エネルギー経済研究所から一般財団法人日本品質保証機構(JQA:Japan Quality Assurance Organizationの略)へと全面的に移管され、現在はJQAがグリーンエネルギー認証センターとして制度を運営している。
グリーン電力証書の境界条件として、証書はシリアル番号によって一元管理されており、同一の環境価値が複数の需要家に重複して販売される「ダブルカウント」を防止する仕組みが組み込まれている点が挙げられる。
また、グリーン電力証書は、資源エネルギー庁と環境省が共同で運営する「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」を通じて、証書が持つCO2排出削減価値について国の認証を受けることができ、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく温室効果ガス算定・報告・公表制度において、国内認証排出削減量として活用することが可能となっている。
なお、「グリーン電力」という言葉自体は、グリーン電力証書という特定の制度を指す場合と、再生可能エネルギーによって発電された電力そのものを広く指す場合の双方で用いられる点にも注意が必要である。
前者はグリーンエネルギー認証センターの認証を受けた証書取引の枠組みを指すのに対し、後者は、小売電気事業者が提供する再エネ電力メニューや、企業が自ら設置する太陽光発電設備等、証書を介さずに再生可能エネルギー由来の電力を直接調達する形態も含む、より広い概念として使われることがある。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2000年11月 | 日本自然エネルギー株式会社が日本初の民間グリーン電力証書商品を企画・発表 |
| 2001年6月 | 第三者認証機関「グリーン電力認証機構」設立 |
| 2008年4月 | 「グリーンエネルギー認証センター」設立、電力に加え熱も対象に拡大 |
| 2008年 | 資源エネルギー庁「グリーン電力証書ガイドライン」発行 |
| 2018年4月 | 認証事業が日本エネルギー経済研究所から日本品質保証機構(JQA)へ移管 |
具体例/ミニケース
小売業B社が、店舗で使用する電力の環境価値を高めるため、グリーン電力証書の活用を検討するケースを考える。
B社は、証書発行事業者との契約を通じて、太陽光・風力・バイオマス等の発電設備と環境価値の移転契約を結んでいる発行事業者からグリーン電力証書を購入した。証書には設備ごとのシリアル番号が付与されており、B社が購入した環境価値が他社に重複して販売されていないことを確認できる仕組みとなっていた。
B社はさらに、購入した証書について、グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度への申請を証書発行事業者に依頼し、認証を取得した分については、温対法に基づく温室効果ガス算定・報告・公表制度における国内認証排出削減量として活用した。
このケースが示すように、グリーン電力証書は、電力契約そのものを変更せずに環境価値を追加的に調達できる点で非化石証書と共通する一方、証書の発行主体が国の市場制度ではなく、認証を受けた民間の証書発行事業者である点に制度上の特徴がある。
非化石証書・J-クレジットとの違い
グリーン電力証書は、環境価値の取引に関わる他の制度としばしば混同される。共通点は「環境価値を証書化して取引可能にする」という点だが、発行の枠組みや運営主体が異なる。
| 制度 | 発行・認証主体 | 対象とする価値 |
|---|---|---|
| グリーン電力証書 | 民間の証書発行事業者(日本品質保証機構が認証・登録) | 再生可能エネルギー由来であることの環境価値 |
| 非化石証書 | 日本卸電力取引所(JEPX)(制度主体:経済産業省 資源エネルギー庁) | 非化石電源由来であることの環境価値 |
| J-クレジット | 国(経済産業省・環境省・農林水産省) | 省エネ・再エネ導入・森林吸収等による温室効果ガス排出削減・吸収量 |
コンサルティング業務での位置づけ
論点設計(イシュー出し)
エネルギー戦略や気候変動対応関連のプロジェクトでは、クライアント企業が環境価値の調達手段として、グリーン電力証書、非化石証書、J-クレジットのいずれを活用すべきか、あるいは組み合わせるべきかという論点整理が初期段階で発生する。
コンサルタントは、活用したい外部基準(RE100、温対法報告等)との整合性を踏まえ、優先順位を検討する役割を担う。
現状分析(As-Is整理)
現状分析のフェーズでは、既存の電力調達構造や、これまでの環境価値調達の実績を棚卸しし、証書の種類ごとの調達コストや、活用できる制度上の位置づけを整理する。あわせて、証書発行事業者や認証状況を確認する作業が中心となる。
施策設計(To-Be)
施策設計の段階では、グリーン電力証書と非化石証書のどちらを、どの用途(RE100等の外部基準への活用、温対法報告、CDP開示等)に活用するかを整理し、複数年にわたる調達計画とコストを試算する。
資料作成(スライド構造)
経営層向け資料では、グリーン電力証書・非化石証書・J-クレジットの特性を整理した比較表と、活用目的別の調達計画を示すロードマップをセットで示す構成が定番である。
制度ごとの違いと自社にとっての最適な組み合わせを一枚で確認できる構造にすることで、経営層が投資判断をしやすくなる。
導入メリットと注意点
グリーン電力証書を活用する最大のメリットは、電力契約を変更せずに、比較的柔軟な形で再生可能エネルギー由来の環境価値を調達できる点にある。
証書発行事業者ごとに、太陽光・風力・バイオマス等、発電方法を選んで調達できる場合が多く、自社の方針に合った電源を選択しやすい点も特徴である。
一方で注意点も多い。第一に、証書の購入だけでは、新たな再生可能エネルギー発電設備の整備に直接つながるとは限らず、追加性(新たな再エネ設備の導入を促す効果)の観点から限界が指摘されることがある。
第二に、グリーン電力証書は民間の証書発行事業者ごとに提供条件や価格が異なるため、複数の発行事業者を比較検討する手間がかかる場合がある。
第三に、RE100等の外部基準や、活用したい国内制度(温対法報告等)によって、認められる証書の要件が異なるため、目的に応じた証書を選定する必要がある。
特にRE100で活用する場合には、発電設備の所在地・発電方式・運転開始時期等の属性情報を追跡できる「トラッキング情報」が付与されていることや、設備の運転開始からの経過年数等の要件を満たしているかを個別に確認する必要があり、証書であれば何でも要件を満たすわけではない点に留意が必要である。
これらの点を踏まえ、実務では、活用目的を明確にしたうえで、非化石証書等の他の制度とも比較しながら、自社に適した調達手段を選択することが重要とされている。
コンサル採用面接で問われる理由
コンサルティングファームの採用面接において、グリーン電力証書という制度名そのものが直接問われる場面は多くない。
しかし、エネルギー政策や企業の脱炭素戦略をテーマにしたケース面接では、複数存在する環境価値調達の制度をどう使い分けるかという論点が問われることがあり、その際に「制度の成立背景や運営主体を踏まえて選択する」という発想を持っているかどうかが、回答の説得力に影響する。
単に「証書を買う」という表面的な理解にとどまらず、民間主導で発展してきた制度と国の制度の違いまで踏み込んで考えられると、エネルギー政策関連の議論に厚みを持たせやすくなる。
採用面接においては、認証機関の変遷や制度の細目まで暗記して披露する必要があるわけではなく、環境価値を証書という形で切り出して取引するという発想の骨格をおさえておけば十分だといえる。
FAQ
Q1. グリーン電力とは、どのような概念か。
グリーン電力とは、一般に再生可能エネルギーによって発電された電力を指し、実務ではその環境価値を証書化した「グリーン電力証書」を含めて用いられることもある概念である。
英語表記はGreen Powerであり、2000年11月に日本自然エネルギー株式会社が日本初の民間グリーン電力証書を企画・発表したことに始まる。
翌2001年に第三者認証機関が設立され、現在は日本品質保証機構(JQA)がグリーンエネルギー認証センターとして制度を運営している。
Q2. グリーン電力証書と非化石証書とは、何が違うのか。
最も大きな違いは、発行・認証の枠組みにある。グリーン電力証書は、民間の証書発行事業者が発行し、日本品質保証機構が認証・登録する制度であり、2000年代初頭から民間主導で整備されてきた。
これに対し非化石証書は、経済産業省資源エネルギー庁を制度主体とし、日本卸電力取引所(JEPX)が運営する市場制度であり、高度化法という法律を背景に2018年に整備された、より新しい制度である。
両者は環境価値を証書化する点で共通するが、発行の仕組みと制度の成り立ちが異なる。
Q3. グリーン電力証書は、どのような手順で活用するのか。
実務における一般的な手順は、まず証書発行事業者に連絡し、自社が調達したい電源の種類や量を確認したうえで、グリーン電力証書を購入することから始まる。
国内認証排出削減量として活用したい場合には、証書発行事業者を通じてグリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度への申請を行い、認証を受けた分について、温対法に基づく算定・報告・公表制度での計上や、統合報告書等での開示に活用する。
Q4. コンサルティングプロジェクトでは、グリーン電力はどのように扱われているのか。
コンサルティングの現場では、クライアント企業の環境価値調達戦略を検討する際に、グリーン電力証書と非化石証書、J-クレジットのいずれを、どの用途にどの程度活用すべきかを比較検討する場面でこの制度が参照される。
また、温対法報告やRE100等の外部基準への活用など、目的に応じて、適切な証書の種類と調達量を整理する役割を担うこともある。
Q5. グリーン電力について、どのような誤解が生じやすいのか。
よくある誤解のひとつは、グリーン電力証書と非化石証書が同一の制度であると考えてしまうことである。実際には、両者は発行主体も制度の成り立ちも異なる別個の制度であり、活用したい目的や外部基準に応じて使い分ける必要がある。
もうひとつの誤解は、証書を購入すれば自動的に温対法上の認証排出削減量として計上できると考えてしまうことである。実際には、グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度への別途の申請と認証を経る必要があり、証書の購入だけでは完結しない点に留意する必要がある。
Q6. グリーン電力証書は、今後どのように活用が広がっていく可能性があるのか。
グリーンエネルギー認証センターの認証を受けた証書発行事業者は年々増加しており、電力だけでなく熱を対象とした証書化も進められている。
また、再生可能エネルギー由来の電力に対する企業の関心の高まりを背景に、証書の発行事業者ごとに太陽光・風力・バイオマス・小水力・地熱等、多様な電源を選択できる商品が提供されるようになっている。
今後も、非化石証書等の他制度との役割分担を踏まえながら、企業の環境価値調達における選択肢のひとつとして活用が続くと見込まれる。
まとめ(実務整理)
グリーン電力は、一般に再生可能エネルギーによって発電された電力を指し、実務ではその環境価値を証書化した「グリーン電力証書」を含めて用いられることもある概念である。
2000年の民間主導による制度創設から、資源エネルギー庁によるガイドライン整備、日本品質保証機構への認証事業移管を経て、現在も企業の環境価値調達の選択肢のひとつとして活用されている点に実務上の意義がある。
非化石証書やJ-クレジットとは、発行・認証の枠組みや制度の成り立ちが異なる点を理解しておくと、環境価値取引に関する議論の見取り図がつかみやすくなる。
コンサルティング業務との関係でいえば、複数存在する環境価値調達制度を、活用目的に応じて比較・使い分ける視点が、エネルギー戦略関連プロジェクトにおいて参考になる。
採用面接との関係でいえば、制度の沿革を暗記する必要はなく、環境価値を証書という形で切り出して取引するという発想の骨格をおさえておけば、十分な知識基盤となる。
出典
- 一般財団法人日本品質保証機構(JQA)「グリーン電力証書ガイドライン」
https://gec.jqa.jp/know/certification/guideline/ - 資源エネルギー庁「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」概要
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/green_energy/outline.html - 資源エネルギー庁「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度 利用の流れについて」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/green_energy/process.html
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