産業革新投資機構(JIC) 官民出資でスタートアップと事業再編を支える投資会社
産業革新投資機構は、民間のリスクマネーが届きにくい産業領域を対象に、ファンド・オブ・ファンズ型の独自モデルを通じて投資エコシステムの整備に関わってきた。本記事では、企業の特徴や理念、沿革、主要なサービス内容、求める人物像、入社後のキャリアパスやトレーニング内容、社員の声、社会貢献・ESGについて整理する。
産業革新投資機構 HPより
産業革新投資機構(JIC)とは
株式会社産業革新投資機構(Japan Investment Corporation、以下:JIC)は、2018年に産業競争力強化法に基づき設立された、官民出資による投資会社である。スタートアップの創出・育成や大規模な事業再編を主な投資対象とし、官民から出資を受けた資金をもとに政策的に意義のある事業分野へ資金を供給する。
JICは、前身にあたる株式会社産業革新機構を2018年9月に改組する形で発足した。産業革新機構は2009年に設立された官民ファンドであり、改組の際に既存事業を引き継ぐ新設分割子会社として株式会社INCJが設立されたが、2025年10月にJICへ吸収合併されている。なお、JIC設立当初の根拠法に基づく運用期限は2034年3月末とされていたが、2024年6月の産業競争力強化法改正により、2050年3月末まで延長された。
投資の仕組みと体制
JICは、投資先企業への直接投資を行うのではなく、傘下のファンドや民間ファンドへのLP投資(機関投資家として特定のファンドに出資する形式)を通じてリスクマネーを供給するファンド・オブ・ファンズ型の運営を採る。投資判断の客観性を確保するため、投資の意思決定は社外取締役と代表取締役社長で構成する「産業革新投資委員会」が担い、取締役会の業務執行と分離されている。
グループ会社として、ベンチャー・グロース領域への投資を担うJICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社(JIC VGI、2020年設立)と、大規模な事業再編やバイアウト投資を担うJICキャピタル株式会社(2020年設立)を有する。民間ファンドへのLP投資においても、機関投資家の視点に立った助言やモニタリングを通じてファンド運用者の育成を図る姿勢が示されている。2025年12月末時点までに、グループ子会社ファンドと民間ファンドを合わせて累計約2兆5,428億円の出資約束を行っている。
重点投資分野
産業競争力強化法に基づく投資基準によって、JICの投資対象は以下の4つの重点分野に定められている。①国内投資・イノベーションの好循環の創出、②スタートアップの創出・育成、③大学発スタートアップ・中堅企業等による地方に眠る経営資源の活用、④市場・ビジネス環境の変化に対応する事業再編の促進、の4分野である。AI・バイオ・創薬・半導体・脱炭素など、民間資金だけでは投資回収に長期間を要したり、リスクが高く資金が集まりにくい領域への資金供給を担う位置づけにある。
近年の動向
2024年の法改正による運用期限延長を受け、JICは風力・地熱・宇宙など長期投資を要する分野への本格的な取り組みを強化する方向を示している。また、2026年4月には公式サイトを全面リニューアルし、投資実績やDE&I(多様性・公平性・包括性)推進に関する情報発信を強化した。
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代表者代表取締役社長CEO:瀬口 二郎
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設立2018年9月
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所在地東京都港区虎ノ門一丁目3番1号
東京虎ノ門グローバルスクエア 9F
News & Topics
産業革新投資機構(JIC)の理念
以下にJICの企業理念を引く。
MISSION
我々は、何を社会にもたらしたいのか未来に投資し、日本を拓く
JICグループは、投資活動を通じて日本の産業競争力を強化し、日本の“これから”を切り拓きます。
VISION
我々は、MISSION実現のため、
どういう存在であるべきか日本のリスクマネーの好循環の原動力となる
JICグループは、産業競争力強化に向けた投資を通じて、企業の価値向上を支援します。
また、投資活動や人材・知識の供給を通じ、投資を巡るエコシステムの拡大に貢献します。VALUE
我々は、MISSION・VISION
実現のため、どう行動するのかIntegrity & Discipline
誠実さと規律ある行動私たちは、政策課題・社会課題の解決に貢献する投資機関として、公共的使命を担っていることを自覚し、全ての企業活動において、高い自己規律を持って、公正かつ誠実な姿勢で臨みます。
Excellence & Professionalism
卓越した専門家としての矜持と挑戦私たちは、プロフェッショナルとしての誇りを持ち、高い専門性と経験を活かして業務にあたり、ミッションの達成に挑戦します。
Accountability & Responsibility
責務の遂行と説明責任私たちは、一人ひとりが自身と組織の役割を理解し、行動や結果に責任を持って企業活動を行います。
Respect & Teamwork
相互の信頼とチームワークに基づく成果の最大化私たちは、ミッションの達成に向けて、互いを尊重し、知識やアイデアを結集し、チームとして力を発揮します。
Diversity, Equity & Inclusion
多様な個性を認め合う組織私たちは、互いの違いを認め合い、誰もが活躍できるよう公平な機会や場を提供し、多様な価値観や才能を活かしながら、新たな価値を創造します。
JICのミッションより引用
産業革新投資機構(JIC)の沿革
以下にJICの主な沿革を記載する。
- 2009年
- 株式会社産業革新機構を設立。
- 2018年
- 産業競争力強化法の改正に伴い、産業革新機構を改組する形で株式会社産業革新投資機構(JIC)を設立。
あわせて、産業革新機構の事業を引き継ぐ株式会社INCJを新設分割により設立。 - 2020年
- JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社を設立(スタートアップへの投資を担うグループ会社)。
- JICキャピタル株式会社を設立(事業再編の促進などを目的とした投資を担うグループ会社)。
- 2024年
- 産業競争力強化法の改正により、JICの運用期限が2050年3月末まで延長。
- 2025年
- 株式会社INCJを吸収合併。
産業革新投資機構(JIC)のサービス
ベンチャーキャピタル(VC)投資戦略
VCへのLP投資においては、以下の3つを重点投資分野としている。
- 国内投資・イノベーションの好循環創出
- スタートアップの創出・育成
- 地方に眠る経営資源の活用
バイアウトファンド投資戦略
バイアウトファンドへのLP投資においては、以下の2つを重点投資分野としている。
- 国内投資・イノベーションの好循環創出
- 市場・ビジネス環境の変化に対応する事業再編の促進
その他のファンドへの投資戦略
その他のファンドへのLP投資においては、以下の2つを重点投資分野としている。
- 国内投資・イノベーションの好循環創出
- 市場・ビジネス環境の変化に対応する事業再編の促進
産業革新投資機構(JIC)の求める人物像
JICでは、誠実さ・強い責任感・チームワーク、そして多様性を尊重する価値観を共有し、自身の専門性と経験をもって社会的価値の創出に貢献できる人材を求めている。官民ファンドという公的使命を担う組織として、高い倫理観と自己規律をもって業務に向き合う姿勢が重視される。
ポジションごとに求められるバックグラウンドは異なるが、ファンド投資室では、プライベートエクイティ(未公開株式への投資)やベンチャーキャピタルファンドへの投資業務を担える人材が対象となる。調査室では、コンサルティングファームやシンクタンク、金融機関等でのリサーチ経験に加え、グローバルな視点から産業・技術・政策動向を包括的に把握できる能力が求められる。いずれのポジションにおいても、論理的なコミュニケーション能力とプレゼンテーションスキルが共通して歓迎される。
JICのVALUEとして掲げられているのは、「Integrity & Discipline(誠実さと規律ある行動)」「Excellence & Professionalism(卓越した専門家としての矜持と挑戦)」「Accountability & Responsibility(責務の遂行と説明責任)」「Respect & Teamwork(相互の信頼とチームワーク)」「Diversity, Equity & Inclusion(多様な個性を認め合う組織)」の5つ。これらはそのまま、JICが求める人材像の基軸となっている。
産業革新投資機構(JIC)でのキャリアパス
JICでは、ファンド投資室・調査室・法務コンプライアンス室など組織別に、アナリスト、アソシエイト、シニアアソシエイト、バイスプレジデント(VP)、ディレクターといった職位が設けられている。
ファンド投資室では、投資機会のオリジネーションからデューデリジェンス、エグゼキューション、投資後のモニタリングまでを一貫して担う体制となっており、投資プロセス全体に携わることができる。国内にとどまらず海外の運用者や投資家との連携も進めており、グローバルな視点でキャリアを積む環境が整っている。
調査室においては、JIC全体の経営・投資戦略の企画立案に携わりながら、産業・技術・政策動向に関する分析力やステークホルダーとのネットワーク構築を深めていく。
産業革新投資機構(JIC)のトレーニング
JICでは、社内研修等を通じてPRI(国連が支援する責任投資原則)やESG・責任投資・インパクト投資に関する理解促進を継続的に行っている。また、JICグループ全役職員を対象に、DE&Iに関する研修(LGBTQ等)も継続実施されている。
産業革新投資機構(JIC)の社員の声
JICでは、日本の産業競争力強化というミッションに共鳴した人材が集まり、公共性と投資の専門性を両立させながら業務にあたっている。ファンドへのLP投資という仕事の特性上、定量的なデータだけに依拠せず、人・組織を見極めながら投資判断を行う点が、やりがいの一つとなっている。以下に、ファンド投資室に所属する社員の声を紹介する。
JICはGo Global※など様々な投資戦略を掲げていますが、エコシステム作りをしていく中で、その影響力の大きさを直に感じています。今後のエコシステムをどうしていくのが良いか、JICとして何ができるのか、ファンド投資室内で議論する場があるのですが、日本のエコシステム全体という大きな目線で考えることができるのは喜びでもあります。
(中略)
※Go Global戦略は、国内エコシステムの発展及び国内スタートアップの海外展開に向け、海外VCと国内VC、国内スタートアップとの連携を支援するJICの取組です。
投資先の方から、何か困ったことや悩みが生じた際に、真っ先に頼りにされて、JICの助言に基づいてそういった事象が解決したときにやりがいを感じます。投資先ファンドの皆様と伴走できていると感じることが多く、そういったときに力になれて良かったなと心から思います。
産業革新投資機構(JIC)の社会貢献・ESG
JICは、日本のプライベートエクイティ業界全体におけるESG(環境:Environment・社会:Society・ガバナンス:Governance)投資の推進に取り組んでいる。投資先ファンドや投資候補ファンドを巻き込み、業界全体でのESGの底上げを図る姿勢が特徴的だ。
責任投資原則(PRI)への署名
2023年10月、JICは国連が支援する責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)に署名した。PRIは、機関投資家がESGの観点を投資の意思決定プロセスに組み込み、受益者のために長期的な投資成果を向上させることを目的として2006年に国連が公表した行動指針で、JICはこれへの参加とともに、社内研修等を通じてPRIやESG・責任投資・インパクト投資に関する理解促進を継続的に進めている。また、投資活動においては「環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取組方針」を適用し、ESGに関するリスクと機会を総合的に評価している。
DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進
JICグループは2024年12月にDE&I推進ポリシーを策定し、「日本のファンド業界における女性活躍の推進」を当面の全体目標として掲げた。具体的には、2030年までにグループ全体の女性比率を40%以上とすること、フロント職員の女性比率を30%以上とすること、意思決定に関わる者の女性比率を30%以上とする数値目標を設定している。
投資活動を通じた取り組みとしては、2024年12月より、スタートアップ業界・投資業界におけるガバナンス強化とDE&I推進を目的に、行動規範・倫理規範の制定を新たに出資要件として設定。2023年度より、投資先VC等に対するモニタリング・ヒアリング(ESGおよびDE&Iに関する取り組み状況)を毎年実施し、投資先における意識醸成を図っている。
社内においては、DE&I推進委員会・Team DE&I+・グループ各社の有志社員で構成されるDE&I推進チームが連携して全社的にDE&Iを推進。産休・育休等からの復帰後の支援制度やウェルネス休暇など、社内制度の整備も進めている。
こうした取り組みは国際的にも評価されており、2024年9月には、投資業界の女性活躍を推進するグローバル団体Private Equity Women Investor Network(PEWIN)主催の「2024 Annual LP/GP Awards」において、“International Limited Partner of the Year”を受賞した。
産業革新投資機構(JIC)についてのFAQ
JICはどのような組織ですか?
JICは、2018年9月に産業競争力強化法に基づき設立された官民出資の投資会社です。国と民間企業25社からの出資を受け、民間資金だけでは供給が難しい産業分野へのリスクマネー供給を担います。直接投資ではなく、傘下のファンドや民間ファンドへのLP投資(機関投資家として特定ファンドに出資する形式)を通じて資金を供給するファンド・オブ・ファンズ型の運営を採用しています。投資判断は、社外取締役と代表取締役社長で構成する「産業革新投資委員会」が行い、業務執行から独立した形で客観性を担保しています。なお、JIC設置根拠となる産業競争力強化法は2024年6月に改正され、運用期限が2050年3月末まで延長されています。
JICの重点投資分野は何ですか?
JICは産業競争力強化法に基づく投資基準によって、4つの重点分野への投資を定めています。①国内投資・イノベーションの好循環の創出、②スタートアップの創出・育成、③大学発スタートアップ・中堅企業等による地方に眠る経営資源の活用、④市場・ビジネス環境の変化に対応する事業再編の促進、の4分野です。具体的にはAI・バイオ・創薬・半導体・脱炭素といった、民間資金だけでは投資回収に長期間を要したりリスクが高く資金が集まりにくい領域を対象としています。2024年の法改正による運用期限延長を受け、風力・地熱・宇宙など、さらに長期の時間軸を要する分野への取り組みを強化する方向が示されています。
JICと産業革新機構(INCJ)はどう違いますか?
産業革新機構は2009年に設立された官民ファンドで、バイアウト投資やベンチャー投資、海外インフラ投資など幅広い案件を担ってきました。2018年9月、産業競争力強化法の改正により、産業革新機構はJIC(産業革新投資機構)に改組されました。この際、産業革新機構が出資決定していた既存案件の管理は、新設分割子会社として分離された株式会社INCJが引き継ぎました。INCJは2025年7月に累計144件・1兆円超の投資回収(エグジット)を終え、同年10月にJICへ吸収合併されています。JICは前身より政策目標と収益目標の両立を明確化し、ファンド・オブ・ファンズ型の投資モデルとしてガバナンス体制を整えた点が大きな変更点です。
JICはスタートアップ支援においてどのような役割を果たしていますか?
JICはスタートアップへの直接投資ではなく、子会社であるJICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社(JIC VGI、2020年設立)を通じた間接支援と、民間VCファンドへのLP投資の2つのアプローチを採っています。2025年12月末時点で、民間53ファンドへのLP投資を実行しており、このうち37ファンドが初号から3号という立ち上げ期のファンドへの支援です。初号ファンド13件への出資実績も持ち、通常の機関投資家が参入しにくい若いファンドの組成を資金・助言の両面から支援してきました。また、機関投資家の視点からの契約内容や運営体制に関する助言も提供し、ファンド運用者の育成を通じたエコシステム全体の底上げも担っています。
JICのプライベートエクイティ(PE)投資の特徴は何ですか?
JICのPE投資は、子会社であるJICキャピタル株式会社(2020年設立)を通じて実行されます。JICキャピタルが運用するJIC PE(JICプライベートエクイティ)ファンドは、大規模な事業再編や海外M&Aを主な投資対象とし、政策目標と収益目標の両立を掲げています。1号ファンドに対してJICは2,000億円の出資約束を行い、大型案件向けの共同投資ファンドには9,000億円を出資約束しています。事業再編やカーブアウト(事業の切り出し)、非公開化など、大型案件に対応できるPEプレーヤーの多様化・育成という政策的役割も担っており、中立的な立場からの関与が特徴のひとつとされています。2025年度にはJICキャピタルの2号ファンド(総額約8,000億円)の組成が決定されています。
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