[2025年]コンサル業界の最新動向
米政権の通商戦略と生成AIの拡大がコンサル業界へ与える影響は?
米トランプ政権が推進する米国の外交・通商政策は、世界経済に大きな影響を与えています。とりわけ保護主義的な関税引き上げは、企業のグローバル戦略やサプライチェーンの再編に直結し、日本企業や政府にも新たな対応を迫っています。
このように世界経済の不透明感が高まる中、転職市場の悪化を懸念する方も多いでしょう。そこで本記事では、2025年のコンサル業界における採用動向を解説します。
2025年のコンサル業界における3つの注目ポイント
注目ポイント① DXやAI関連のプロジェクトが急増
企業のDXやAI活用への投資は、今後さらなる加速が見込まれています。なかでも生成AIへの期待は極めて高く、世界最大級のITリサーチ企業である米ガートナー社によると、2025年には生成AI分野への投資額が世界全体で6,440億ドル(約93兆円)に達すると予測されています。これは2024年と比較しておよそ76.4%増という、驚異的な伸びです。
ChatGPTの登場で一気に注目を浴びた生成AIは、業務の自動化から新規事業開発まで、さまざまな応用可能性を秘めています。2025年には、複数のAIが連携してタスクを自律的に遂行する「エージェンティックAI」の実用化が進む見通しです。また、ドローンやIoT、5Gなどを活用した新技術も広く普及し、社会や産業構造も大きな変化が起きることでしょう。
このようなテクノロジーの急速な進化に対応するため、様々な業界においてコンサルティングサービスへのニーズがさらに高まると予想されます。一方、AIやドローンなどのデジタルツールを企業が活用するためには、コンサルタントが戦略を提案するだけでは十分とは言えません。今まで以上に企業に深く入り込み、業務を深く理解したうえで、新たなツールの定着化を支援することが求められます。このような企業からの期待を受け、戦略立案からIT実装まで一貫して対応できるファームの存在感が増すでしょう。
ただし、AI活用はファーム内でも急速に進んでいます。従来はジュニアクラスが担ってきた、単純な分析や資料作成、リサーチといった業務が、AIに代替されつつあるのです。そのような背景により、若手未経験者の採用状況は先行きが不透明となっています。
注目ポイント② グローバルファームの成長に温度差
前述の通り、コンサル市場全体の成長は続いているものの、一部の外資系ファームでは成長が鈍化しつつある点には注意が必要です。
ウクライナ危機の長期化や米国の通商政策による貿易摩擦が深刻化し、欧米諸国の景気は停滞傾向にあります。その影響で、外資系ファーム本社では、厳しいコストカットや人員削減に踏み切るケースが増え、東京オフィスでも採用を絞り込む動きが見られるのです。
もちろん、グローバルファーム全体が苦境にあるわけではありません。デジタル領域で事業を拡大した大手戦略ファームや、デジタル・AI専門チームを擁する総合ファームは、大規模案件を次々と獲得し、着実に成長を続けています。
このように、グローバルファームの中でも明暗が分かれ、好調な企業とやや苦戦している企業の差が大きくなっているのです。
注目ポイント③ 躍進する日系ファーム
海外経済の影響を受けやすいグローバルファームに対し、日系戦略ファームや日系総合ファーム、シンクタンクなどの日系コンサルティングファームは、堅調に成長しています。
その背景には、以下のような要因があります。
▪円安などを背景とした競争力の向上
近年の円安・ドル高の為替動向は、国内拠点を主軸とする日系ファームに追い風となっています。
グローバルファームでは、プロジェクト報酬がドルやユーロ建てで設定されることが多く、円換算するとフィーが高額になりがちです。一方で、日系ファームは為替変動の影響を受けにくいため、コスト面で優位に立ち、その競争力を武器に受注を拡大しています。
また、海外本社へのロイヤルティや収益分配が不要な事業構造も、日系ファームのコスト競争力の向上に貢献しています。
▪採用力向上と組織強化
上述のような構造から、コスト面での優位性を持つ日系ファームは、優秀な人材に十分な報酬を支払いやすい状況にあるのです。昨今では、外資系ファームから優秀なコンサル経験者を高額な報酬で抜擢し、組織を強化する日系ファームが目立ちます。
とりわけ、「日系グロースファーム」と呼ばれる新興企業の成長が著しいです。これらは、外資系戦略ファームやグローバル総合ファームで豊富な経験を積んだコンサルタントが立ち上げた組織で、早期の上場を視野に入れながら、従来の外資系ファームを上回る報酬水準を提示するケースも珍しくありません。特に、IT・DX領域を強みに顧客層を広げ、組織規模を着実に拡大しています。
2025年のコンサル転職市場の予測
コンサルティング業界全体を俯瞰すると、DXやAI活用をはじめとするIT戦略分野、さらにはSDGs対応や地政学リスクといった新テーマも絡み、ニーズはますます拡大しています。大規模プロジェクトや新規案件の依頼が増加する中、多くのファームが採用を強化している状況です。その結果、コンサル経験者はもちろんのこと、コンサル未経験者についても、高い専門性を持つ20代後半~40代の方を中心に積極的な採用が行われています。
特に、以下のバックグラウンドを持つ方へのニーズが顕著です。
- ・大企業で経営企画やM&A、プロジェクトマネジメントを経験した人材
- ・新規事業の立ち上げやスタートアップ投資などで成果をあげた人材
- ・IT導入やデジタル技術に深い知見を持つエンジニア・技術者
- ・官公庁や自治体で多様な利害調整や運営経験を担ってきた公務員
戦略ファームや総合ファームが重視するのは、単なる業務知識だけではなく、クライアントの課題を俯瞰的に捉えて、プロジェクトを円滑に動かす能力です。多彩なキャリアと豊富な実務経験を持つことは大きなアドバンテージとなりえます。実際、30代後半~40代のコンサル未経験者を、マネージャー以上で採用するケースが定着しつつあります。
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もちろん、コンサルタントには、最新の経営手法や先端技術を積極的に取り込む「成長意欲」も欠かせません。生成AIやDXの最新知識、M&A戦略など、急速に発展する分野を迅速にキャッチアップし、自らの武器とすることがキャリア向上の鍵を握るでしょう。
2025年は、好調な転職市況を生かす「重要な機会」
2025年のコンサルティング業界は、不透明な国際情勢の影響を受けながらも、全体としては好調を維持しています。
生成AIや地政学リスクといった新潮流への対応が急務となる中で、各ファームは即戦力となる人材や、高度な専門性を持つ人材の獲得を急いでいるのです。
一方で、世界経済のさらなる後退や紛争など、突発的な要因で採用市況が急変するリスクもあります。特に、若手層はAIの進化によって採用枠が減少し、転職のハードルが高まる可能性もあります。採用意欲の高い“今”のうちに、早めに転職活動を始めることをおすすめします。
著者/監修者
(著者/監修者)
「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』『未来をつくるキャリアの授業』は東京大学におけるキャリア設計の授業の教科書に選定。『新版 コンサル業界大研究』は東大生協本郷書籍部で第1位を獲得。
ビジネスリーダーのキャリア支援に豊富な実績を持つコンコードのコンテンツ編集チームです。独自のナレッジやキャリア設計法、転職市場の最新情報を、わかりやすくご紹介します。