転職市場の市況
転職市場の市況とは
「転職市場の市況」とは、企業の採用意欲や求人数の動向を含む転職市場全体の景気を表す概念である。企業が積極的に採用を行う時期は市況が良い状態とされ、逆に採用を控える時期は市況が悪い状態と言える。この市況は景気動向や業界のトレンド、社会情勢などに大きく左右される。
転職活動の成否には「実力」「学歴」「職歴」「年齢」といった個人の要素も大切だが、「転職市場の市況」も極めて大きな影響を及ぼす。市況が良ければ、実力に関係なく高年収や好ポジションを得やすくなり、逆に市況が悪い時は、どれほど優秀な人材であっても転職が難しくなる。つまり、市況は本人の努力なしに転職活動が有利となる外的要因といえる。
「転職市場の市況」は、合否に非常に大きなウェイトを占めるため、キャリア設計の際には欠かせない要素なのだ。
転職市場の市況が、合否に直結する理由
市況が良好な時期には、企業は採用枠を拡大し、これまで対象外だった人材にもチャンスが巡ってくる。未経験からのキャリアチェンジも比較的容易で、希望年収やポジションも実現しやすい。
一方、市況が悪化すると企業は採用基準を引き上げ、ポジションは一気に希少化する。その結果、未経験者の門戸は大幅に狭まり、同じスキルを持つ人材であっても、時期によって合否が大きく分かれることがある。
実際、コンサルティングファームや投資銀行といった人気企業でも、ある年は未経験者を大量に採用する一方、別の年には即戦力人材に絞るケースがある。同じ候補者であっても「今年は合格だが、来年は書類選考すら通らない」という状況が現実に起こり得るのである。
過去の事例が示す、「転職市場の市況」のインパクト
市況の影響は過去の事例からも明らかだ。2008年のリーマンショック直後、人材市場は深刻な冷え込みを見せた。投資銀行やコンサルティングファームでは部門閉鎖や事業撤退に伴うリストラが相次ぎ、非常に優秀な人材が大量に転職市場に流入した。しかし企業側は採用意欲を著しく低下させており、転職活動した多くの人が希望ポジションを得られなかった。
このような不況期に転職せざるを得なかった人は、不本意な条件でキャリアを続けざるを得ず、大きな影響を受けた。一方、転職の必要がないにもかかわらず無理に動いた人は、採用見送りの履歴が残ることで、再挑戦の機会を失うリスクにも直面した。
その後、2012年以降は「転職市場の市況」は良好な状態が続いた。2020年には新型コロナウイルスの世界的流行により、一時的に転職市場が停滞した。しかしその後、DXや新規事業への需要が高まり、コンサルティングファームやIT系スタートアップを中心に採用意欲が急速に回復。未経験者も含めた積極的な採用が行われている。
このような好市況の下では、未経験の職種であっても転職の可能性が大きく広がる。たとえば、コンサルティング業界の経験がなかった人でも30代後半~40代で大手コンサルティングファームから内定を獲得するなど、従来であれば難しいようなキャリアチェンジが次々と実現しているのだ。
転職市場が「晴れ」の時期に動き、「雨」の時期は静観が鉄則
過去の教訓を天候になぞらえれば、市況が良い「晴れ」の時期にはキャリアアップのチャンスを掴みにいき、市況が悪化する「雨」の時期には無理に動かず、次の好機に備えるというのがキャリア設計の基本的な考え方である。
将来の市場を正確に予測することは難しいが、情報収集を怠らなければ、「市況」という天気を読むことは十分に可能だ。たとえば、人材市場の動向に精通するキャリアコンサルタントと定期的な接点を持つことも有効だろう。
「年齢」との兼ね合いも重要
加えて、転職市場の市況が良いときに行動すべき理由には、「年齢」という要素もある。特にコンサルティングファームのように、未経験者を対象とした「ポテンシャル採用」に年齢制限を設けている企業では、35歳という年齢が採用可否の分岐点となることが多いのだ。
たとえば、33歳でコンサル未経験の方が、外資系戦略コンサルを目指していたとする。「まだ35歳までに余裕があるから、外資系コンサルに応募する前に英語力をもう少し身につけておこう」などと悠長に構えている間に市況が悪化すれば、その冷え込みが3年程度は続く。そうなると、市況が回復する頃には36歳になっており、戦略コンサル未経験者が応募可能なラインとされる35歳を超えてしまう。
この例が示すように、市況と年齢の両方を見極めて判断することが重要である。時に「市況が良好な今こそが転職のラストチャンス」と捉えて行動に移すことが求められるのだ。
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