キャリアの階段
キャリアの階段とは
「キャリアの階段」とは、自分が望むキャリアのゴールに到達するために途中に設ける“ステップ”を意味する。将来の理想像に一足飛びでたどり着くのは難しい場合でも、必要な経験を積み、スキルを習得していくことで、より現実的かつ着実に目標へ近づくことができる。険しい山を登る際に、ルート上に足場を築きながら山頂を目指すように、将来を見据えて最適なルートを設計するうえで欠かせない考え方といえる。
この「キャリアの階段」という概念は、コンコードエグゼクティブグループが提唱するキャリア設計のフレームワークのひとつである。実際に多くのビジネスリーダーがキャリア形成に取り入れ、その有効性が広く知られるようになった。
キャリアの階段が導く「最短ルート」と「セーフティ・ネット」
キャリアを大きく飛躍させるには、目標までの「階段」を適切に設計することが不可欠である。理想のポジションをいきなり得るのは難しいが、中間地点を用意することで道は開ける。ここでは、コンコードに相談に訪れた女性のキャリア事例を紹介しよう。
彼女は35歳で大手事業会社のマーケティング部長に転職し、年収は約1,600万円に到達した。各種手当を含めると実際の収入は1,800万円近くに及んでいる。いったいどのようにして、これほど高いポジションを手に入れたのだろうか。
もともと彼女は、新卒で日系大手企業へ営業職として入社。しかし、数年が経ち、希望していた経営企画やマーケティングのポジションに就くまでには長い時間がかかり、幹部ポジションに昇進するにはさらに10年以上を要という現実に気が付いた。一方で、営業職から大手企業の経営企画へ転職することも難しい。
20代後半となった彼女は、この状況に悩み、コンコードの門を叩き、将来を見据えたキャリア設計を行う。導き出された戦略は、いきなり経営企画職やマーケティング職をめざすのではなく、まずはコンサルティングファームに転職してスキルを身につけ、その実績をもとにして最終的なゴールに近づくというものだった。
彼女は実際にその戦略に沿ってコンサルティングファームへ転職し、大企業の戦略立案や海外マーケティングを含む多様なプロジェクトに携わった。34歳でマネージャーに昇格。そして翌年、豊富な経験とリーダーシップが高く評価され、大手外資系企業のマーケティング部長に抜擢されたのである。
この成功の要因は、キャリアの階段を設定し、段階的にゴールを目指した点にあった。営業職から直接、大手企業の経営企画部門へ移るのは現実的に難しい。そこで中間地点としてコンサルティングファームを経由することで、戦略やマーケティングのスキルを短期間で獲得し、事業会社において即戦力とみなされる道が開けた。コンサルティング業界は若手や未経験者を積極的に採用する傾向が強く、短期間で高度なスキルを身につけることができる。その特性を踏まえたキャリア設計が功を奏したのだ。
一見、遠回りにも見える「キャリアの階段」を活用したこのプランは、彼女にとって事業会社の経営幹部に至る最短ルートとなったのである。
キャリアの階段は転職だけでなく、一般にリスクが高いとされる起業を考えている方にも有効だ。たとえば、実際に起業する前に、戦略コンサルやベンチャーキャピタル、ネット系企業などのキャリアを挟む。起業に必要となる経営スキルや業界知識、ネットワークなどを得やすい企業で経験を積んだ後に起業へチャレンジすれば、その成功確率は大きく高まる。
仮に転職や起業が思うように進まなかったとしても、キャリアの階段を上る過程で得たスキルや実績が他の企業から評価され、新たなチャンスにつながる場合もある。言い換えれば、キャリアの階段は夢の実現に近づくための最短ルートであると同時に、目標が達成できないというリスクに備える「セーフティ・ネット」の役割も果たしているのだ。
所属企業への「貢献」が大前提
ここまで見てきたとおり、「キャリアの階段」を上手に設ければ、将来像の実現可能性は飛躍的に高まる。実社会において、自身の夢を実現するための方法といえるだろう。
なお、ここで注意しなければならない大切な点がある。それぞれの「キャリアの階段」において在職する企業に対しては、「経験を積ませていただいている」という感謝の気持ちを持つことを忘れてはならない。
しっかりと価値を生み出し、組織に貢献することが、キャリア形成の大前提となる。転職する機会が増え、キャリア設計の自由度が高くなった現代だからこそ、特に意識する必要がある。
現在ビジネスリーダーとして活躍する方も、軸となるキャリア戦略を持ちつつ、目の前の一つひとつの仕事で成果を生み出すことで、人生を飛躍させているのだ。
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