コーン・フェリー、インフレが企業の報酬政策に与える影響の調査レポート発表
コーン・フェリーは、2022年11月、調査レポート「現状のインフレと労働市場が報酬に与える影響」を発表した。調査結果の概要は以下の通りである。
現在、米国のインフレ率が8.5%と過去40年間で最も高水準にある。その要因としては、人件費の高騰(特に低賃金労働に対する人件費)、ロシアのウクライナ侵攻による原油価格高騰、サプライチェーン圧迫による価格上昇に加え、直近までの歴史的低金利による消費者の支出増加、2020年以降の歴史的住宅在庫の減少による住宅購入価格と賃貸料の押上があるとされる。
組織が現在のインフレ環境に対応するために報酬調整の必要に迫られた場合、従業員に対して変動報酬プログラム(臨時の事象に対する1回限りの報酬)の一部として考慮されるべきだが、これまでこのような対応は限定的であった。
世界のほとんどの組織で2022年の昇給予算の中央値が2021年秋に計画していたものよりも上昇している。米国では基本給の中央値は3.0%(夏頃)かた3.5%(秋頃)、4.0%(平均値)へと上昇し、同時期に英国は2.5%から3.0%、オーストラリアでは2.4%から3.0%、ブラジルは6.1%から7.4%、トルコは18%から30%へと上昇している。
今年、ほとんどの組織が従業員に昇給を認めており、75%の従業員を昇給させるのは80%、90%以上の従業員を昇給させるのは70%、95%以上の従業員を昇給させるのは60%、100%の従業員を昇給させるのは45%の組織である。
また、報酬の重点分野についてはパンデミック前と比較し、通常ボーナス以外の特別なインセンティブ/ボーナス(利用率20%増)、サインオンボーナス、リファーラルボーナスの利用拡大(18%増)、リテンションボーナス(18%増)、ESG、CSRの指標を役員インセンティブプログラムに導入(17%増)をさらに活用している。
報酬には組織が従業員に提供する「価値」に相当するものすべてを含み、1年前に比べ多くの企業が非金銭的報酬に注目している。具体的には、調査対象者の40%が従業員のつながりや組織の受容(インクルーシブ)力向上のためマネージャーやリーダーを育成する人材開発投資の増加、36%が重要な組織改革の優先事項に関して従業員との関わり強化、31%が従業員の成長とキャリア開発の機会についてより明確な情報提供等がある。
日本の報酬調査責任者は「インフレ転換局面において更なる基本給の底上げで対応することには、多くの企業が慎重となっている。今後企業の人事部門は、様々な視点を検討する必要があり、総合力が問われている」とコメントしている。