電通総研、気候変動に関する学術的な国際調査に日本から初参画
dentsu Japanの組織である電通総研は「世界気象デー(3月23日)」を前に、日本から初めて気候不安に関する学術的な国際比較調査「子どもと若者における気候不安と気候変動への政府の対応についての考え方:国際調査」参画した。これは英バース大学が中心となり、2021年に10か国(オーストラリア、フィンランド、フランス、ポルトガル、英国、米国、ブラジル、インド、ナイジェリア、フィリピン)の16~25歳の若者層を対象に実施された気候変動に関する学術的な国際調査である。電通総研が日本で初めて実施した調査では、選考調査と同一の質問の日本語訳に加えて独自設問を設け、日本在住の16~65歳、計5,000名を対象とした。
気候不安(エコ不安)とは、「環境が破壊されることへの懸念から引き起こされる慢性的恐怖」を指し、環境保護への意識が高い人ほど気候不安に陥りやすいとされる。2020年にアメリカ心理学会が発表した調査によると、アメリカの18歳以上の68%が気候不安を感じている。欧州でも多くの人がこの症状を訴えており、WHOもメンタルヘルスへの深刻な影響を問題視している。
この調査で、日本のZ世代の72.6%が気候変動による「不安」を感じており、これは11か国中2位であった。さらに、49.1%が「気候変動に対する感情は私の日常生活にネガティブな影響を与えている」と回答するなど、日本でも気候不安が広がっていることが確認された。気候変動を「心配している」は各国ともに8割にのぼったが、日本では「心配していない」が14.6%と、11か国中最も高った。さらに、日本のZ世代が抱いている気候不安の具体的感情は他国と異なる点も見出された。日本では「不安」や「恐れ」といった漠然とした感情がみられる一方「悲しみ」「怒り」「無力感」「罪悪感」といった感情はあまり見られず、他の10か国との乖離が明らかになった。気候変動によって考えさせられたことについて7項目に分けて質問したところ、日本のZ世代は全体として「はい」と答えた割合が10か国平均と比べ、低い傾向にあった。漠然とした不安はZ世代の約半数が感じているものの、「私は両親と同じようなチャンスを手に入れられないだろう」「子どもを持つことをためらう」といった具体的な心配は他国よりも著しく割合が低かった。日本のZ世代は気候不安を感じているものの、将来が具体的に脅かされるという不安につながっている人は多くないことが分かった。