EY、2022年の世界のIPO市場は記録的活況から停滞期に移行と発表
EYは2023年1月、四半期レポートEY Global IPO Trends 2022において2022年のIPOに関する調査結果を発表した。
世界のIPO市場は2021年に過去最高水準を記録したが、2022年にはわずか1333件、1795億米ドルを調達したのみとなり、2021年と比較して調達額が45%、件数が61%減少した。企業価値評価低迷と株式市場の不振により、ディールの平均規模が縮小し、2022年に大規模なIPOはあまり見られなかった。それでも、2019年の新型コロナウイルス感染拡大前と比較すると件数で16%増加している。
インフレの高まり、金利の上昇に特徴づけられる市場環境において、投資家は新規上場企業にはあまり注目せず、よりリスクの低いアセットクラスへと流れている。このような状況の中、PEファンドやベンチャーキャピタルがスポンサーを務めるIPO活動は件数で77%、調達額で93%の激的落ち込みを示した。
IPO市場活動は大半の業種や地域で低調だったが、成功を収めた業種や地域もいくつか見られた。2022年においてテクノロジーセクターは件数において引き続きトップ(全体の23%)であり、調達額においてはエネルギーセクターがトップ(全体の22%)であった。メガIPO(調達額10億米ドル以上の大型案件)により上場した企業を見ると、2022年の平均調達額は2021年と比較し、45%上昇した。これは2022年に実施されたエネルギー業界のメガIPOが高い評価額を付けたことに因る。世界的市場は低迷する中、中華圏、中東、一部のASEAN諸国は、比較的好成績を収めた。Asia-PcificのIPO市場は845件のIPOを通じて合計1206億米ドルを調達した。これは2022年の世界全体のIPO件数の63%、調達額の67%に当たる。
IPO市場が再び活況を取り戻すためには景況感の改善、株式市場のパフォーマンス向上、インフレ緩和、金利上昇の終了、地政学的緊張の緩和、コロナ禍の慧海経済への影響の縮小といった多くの条件がそろう必要がある。IPOを検討する企業の多くは依然として「様子見」の姿勢をとり、適切な時期の到来までIPOを延期することとしている。現段階においては投資家は成長可能性よりも売上高向上、収益性、キャッシュフローなどの企業の基礎的財務データにより注目していくだろう。